第7話

 優和さんに話した次の日、学校を休み愛蓮の病室に行った。「愛蓮がされてたこと、全部話してきた。」「ごめん、何もしなくて。」「俺達が何かしてたら、こんなことになんなかったのにな。」と、愛蓮に報告した。「本当に、ごめんなさい。」そう、俺達が言った瞬間に、握っていた愛蓮の手が冷たくなっていった。顔を見ると、涙が、流れていた。

 すぐにナースコールを押して、医者が心臓マッサージをしたりAEDを使ってどうにか蘇生させようとしていた。5分後、モニターからピーと言う音が大きくなったように感じた。「残念ながら、お眠りになりました。」そう言われた途端、ずっと寄り添っていたご両親が泣き崩れた。「愛蓮、愛蓮ごめんなさい。」「無理矢理学校に行かせて、話も聞かずに。」そう言っていた。


 この日、俺達は、大切な人を失った。


 それから、俺達は気力を失った。大切な、幼馴染をなくして、初めて、自分達の罪の重さに気づいた。一緒にいるだけでは駄目なんだ。反論しなくてはいけない。大切な人を守るには、自分達もリスクを負わなければいけない。愛蓮は、話を聞いてくれるから、傍観者じゃないよと言っていたが、立派な傍観者だ。話してくれているのに、何もしなかった。何よりも、誰よりも酷い傍観者だ。

「愛蓮、俺達が間違ってたよ。ただの傍観者より、酷いじゃねえか……」いつもチャラチャラしている、竜也が言った。それだけ、失った悲しみが大きいのだ。

「……」いつも、誰よりも冷静な涼平が、黙るほどだ。かくいう俺も、ただただ2人といるだけだ。でも、しなければいけないことがある。愛蓮が、命をもって、俺達に伝えたかったことをみんなに伝えなければいけない。残された俺達が、愛蓮のためにやることだ。


 この数日後、俺達は先生にお願いして、全校集会で言いたいことがあると言い、話してもいいと許可が出た。全校集会で、愛蓮がいじめられていたこと、先生が何もしなかったこと、俺達も見て見ぬふりしていたことを話した。「人の命が簡単に奪えるんです。言葉は、盾ではありません。残酷なナイフなんです。言葉は気をつけて使ってください。」「見て見ぬふりをしていた俺達が言えることではないとはわかっています。ずっと一緒にいたのに、何も言わなかった。それをとても悔やんでいます。」「いじめにおいて、加害者も観衆も悪い。しかし、ただ見ているだけの傍観者の方が悪いと思います。いじめを隠している学校も同じです。人の命を軽く考えないでください。」そう言って、先生達も生徒達も動揺していた。先日の新聞にもいじめが原因での自殺であると書いてあった。それは無論、大西優和さんの記事だ。その記事を見た学校は、以前にいじめの事実は無かったと言っていたため、焦っていた。だから、全校集会で俺達がこれを話したとも知られることにもなったが、自分たちが正しいと思ってやった。誰に何を言われようとも、自分たちの罪をしっかり償っていかなければいけない。忘れずに。


 1年後の1月27日。また屋上に来た。ここに来たら、愛蓮に会える気がする。愛蓮、ありがとう。愛蓮の死は絶対に無駄にしないから。だから、空から見守ってて。愛蓮の分まで、幸せになるって約束する。

 そう誓って、俺達は屋上を後にした。


 いじめは、人の命を簡単に狩り取れる。それを、忘れてはいけない。心に、刻んでおかなければ、いけないのだ。


「今日も、あの星が輝いてる。」

「そうだね。あれが、愛蓮だよ。」

「俺達の、大切な人。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

星は輝く @arenn_s2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ