真夜中のマヨネーズ(改訂版)

貴音真

【真夜中のマヨネーズ】

「…………行かないで!」

 私は大声を出しながら飛び起きた。飛び起きた私の横に彼はもういなかった。十年間寄り添った彼はもういない。なにか夢を見ていた気がするが思い出せない。彼がいた頃の夢を見ていた気がするが思い出せない。私はそれを思い出すためにもう一度夢の世界へ行こうとした。だが、私のあたま肉体からだはそれを拒み、どれだけ懸命に布団の中で目をつむっても私が再び夢の世界へ招待されることはなかった。

「………どうしてそんな意地悪をするの……」

 夢の世界への扉を開くことが出来なかった私はぽつりと文句を言ったが、それに応える者はいなかった。私は夢の世界へ行くことを諦めた。視界、感覚、記憶、全てにうっすらともやが掛かっている様な暗闇の中、私の目に飛び込んできたのはマヨネーズ。彼はマヨネーズが大好きだった。夢の世界から入国を拒まれた私はマヨネーズを手に取ると冷蔵庫を開けた。そこに彼がいた。私はマヨネーズを彼にかけると窓を開け、それを窓から放り投げた。冷蔵庫の中には彼はもういない。今のが最後の一つだった。私はマヨネーズをゴミ箱に棄てた。窓の外からはカラスの鳴き声がきこえていた。

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真夜中のマヨネーズ(改訂版) 貴音真 @ukas-uyK_noemuY

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