性よ混じれや乙女よ進め

九十九語 矢一

浜松駅前は政令指定都市をしている

高校2年生というものは、きっと高校生活で1番楽しいものなのだろう。

ゴールデンウィークも開けもうすぐ梅雨の季節という今日この頃、俺には彼女などいなかった。


「なぁ晴也、ゴールデンウィーク明けってほんとに憂鬱だよな。もう7月末まで祝日がないんだぜ?」


俺にそう話しかける聞き覚えのある声は高校に入って1番最初に友達になった加賀美仁だった。


「毎年ゴールデンウィーク明けなんてそんなもんじゃないか?」


毎年この時期は中だるみしている。いわゆる5月病だ。俺も正直何もしたくない。


「なぁなぁ聞いてくれよ。ゴールデンウィーク彼女と3回もしちまった笑」


「まじかよ!」


また始まった仁の惚気話。正直嫌気がさす。

こいつ2ヶ月前に彼女ができてからというもののあらゆることを自慢してくる。


「お前も早く彼女作れよ。ほんと、青春してる気分になれるぜ。」


こいつ、惚気話するところ以外はいい奴なのにこういうところがムカついてしょうがない。


「まぁそのうち作るよ。」


はぁ


俺は1つ深いため息をつく。もう帰ってやろうか。




放課後というのは気持ちのいいものだ。1日の面倒事を全て忘れて自分のしたいことをすることが出来る。今日は駅前にでも行こうか。


俺が通っている東ヶ丘高校は浜松市街からは遠く離れた辺境の地と言ってもいい所に位置している。何だこの周り田んぼしかない場所は、ここは政令指定都市だろ。


俺はそんな疑問とも言える不満を吐きながら自転車を走らせる。駅まで1時間かからないくらい。めんどくさいが、市内の大きいアニ〇イトは駅前にしかないから仕方がない。


駅前というのはいつからリア充のための溜まり場になったのだろうか。俺が気にしすぎなだけだろうか。放課後は自由な奴らばかりだ。もう不純異性交遊だろこれ。


俺は目の前を通り過ぎるカップルに中指を左手を押さえつけ、自分の気持ちを押し殺した。


浜松駅周辺は相変わらず政令指定都市をしっかりとしているほど賑わっている。それだけ駅前には色々なものが集まっているのだ。


「さてさて、今月の新刊とグッズを買っていきますかねぇ。」


おっと、いけない。口がニヤニヤしてしまう。気持ち悪いからやめておこう。


俺は気持ちを正して本棚と再びにらめっこをする。


最近は女子高生なんかもアニメイトによく来るようになったな。隣にいる女子なんてこんなところにいていいわけのないほどの美少女だぞ。変わったもんだ。まぁ俺には関係ない話だ。


俺はラノベを数冊とアクリルスタンドを持ってレジに並ぶ。


オタクは出費が辛いぜ。俺のお財布事情は当分寒そうだ。


浜松駅から出る頃には外は暗くなっていた。

春も終わろうとしていることもあり外は暑すぎず寒すぎない丁度いい気温をしている。


「少しぶらついて行くかな。」


俺は浜松駅から西方向へと歩き出す。


ザザシティへと向かう途中になる飲食店は時間も相まって人が多く集まっていた。


もう金が少ないっていうのに飲食店ばっかだ。腹がやられちまいそうだ。


そんな時、ふと目の前に見知った顔が建物から出てきた。


あれって、委員長だったよな。確か名前は…

国木田さんだっけか。って男といるし、なんだカップルかよ。この怒りをどこに吐き出せばいい。


彼女は彼氏と思われる人に頭をぺこりと1回下げると別れてこっちに歩いてきた。

お互いに何も気づいていないかのように隣を通り過ぎていく。


「というか、こんな時間に放課後どこ行ってたんだよ委員長。」


少し気になって彼女達が出てきた建物の前に行くと俺は目を疑った。


「は?ラブホ…だと。」


委員長、真面目だと思ったのに意外だぜ。

俺は少し、涙が出てきた。

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