簡単に稼げる仕事などあってたまるか
私の家にはお金がなかった。母親はとてもお金使いが荒く、それに耐えきれず父は離婚届を残してどこかへ消えてしまった。
ほんと、どっちの親も自分勝手だ。
母親は夕方になると家にいない。ホストの元に行くからだ。お金はほとんどホストの男に使われる。
「ねぇ、お母さんはいつも夜どこへ行くの?」
今年で小学2年生になった弟が尋ねてくる。
私はいつも返答に困ってしまう。正直に伝えるわけにもいかない。私が頑張らなくちゃ。
母は午前中は働いているものの稼いだお金のほとんどをホストに貢ぐせいで、私もそろそろアルバイトを始めないと弟たちの生活が危ない。
この服もヨレヨレだし、鉛筆もこんなに小さくなるまで使って…ごめんね、お姉ちゃんがどうにかするからね。
弟たちの部屋の掃除を終え、自分の部屋に戻り勉強を始める。
なんとしてでも学年1位で推薦を貰わなきゃ。大学には行かないといい会社で働けない。弟たちには無理のない生活をさせてあげなきゃ。
私は昼休みも無駄には使いたくない。私は机に向かい勉強を始める。べ、別にお金が無くてお昼が食べられない訳ではない。
「今日も勉強なんて偉いねぇ委員長さんは。」
パックジュースのストローを咥えながら私に話しかけてきたのは何故か入学式から私に絡んでくる。川崎恵那だった。
「別に、今のうちからコツコツ積み重ねておくだけです。貴方こそ少しは勉強したらどうです?」
彼女はゲッ!っと体を少し震わせると、何も無かったかのような顔で話を続ける。
「でも、今日はなんかお悩みがありそうな顔してるのね。」
私は一瞬体が止まる。
なんで、私が悩んでることがわかったの。
彼女はニヤッと笑うと。
「図星だね。何で悩んでるのよ。言ってみ?話した方が楽だよ?」
「別に話すことなんてないですよ。悩んでない、ですから。」
「ほんと今日おかしいよ?私は真剣に言ってるんだけどな。」
確かに彼女の目は透き通るように美しく、とても嘘をついてるようには思えなかった。
「お金、少し困っているんです。私の母親はお金使いが荒くて。」
「ふーん。ちゃんと言えるじゃん笑」
ニコッと嬉しそうに笑う彼女を見ると、楽に生きてて羨ましくなる。
「それで、アルバイトでもするの?」
「出来るわけない。私には2人の弟がいるんです。まだ小さいので私がお世話をしなくちゃいけないし、だから時間なんてない。」
「あるよ?簡単に大金稼ぐ方法。」
「そんなの、あるわけ…」
「パパ活」
私の言葉を遮って、彼女は一言そういった。
「は?そんな犯罪まがいのこと、私はしません。」
「でもお金が無いんでしょ?1回するだけで2万は稼げるし、委員長の顔の良さなら3万でも払ってしてくれる人はいると思うけどな。」
「そ、そんなに…」
パパ活ってそんなにお金が貰えるなんて…思ってもみなかった。でも、こんなこと、する訳にはいかない。
「いいからいいからスマホ貸してみ?」
私が貸すと言う前に彼女は私のスマホを盗みとり、勝手に色々し始める。
「ほいっ」
「ちょ、何勝手に」
彼女は私のスマホにトークアプリを入れて私の写真でつぶやきをしていた。
「とりあえず1回してみ?お、ほら通知来てるじゃん。」
「し、しません。」
言葉でもそう言ったものの、私はその手軽さから貰えるお金の多さに心を奪われていた。
「こんにちは、えっとりょうせいさんでしょうか?」
放課後、私は初めてのパパ活をしていた。
浜松駅前の家康くんの前にはいつも待ち合わせをしている人が多い。
「そうですそうです。美帆ちゃん今日はよろしくね。じゃあ行こっか。」
私は手を繋ぎ、男とホテルに向かった。
ホテル代まで全部払ってくれるなんて。
私はその驚きを隠せていなかった。
「美帆ちゃん処女なんだよね。優しくしてあげるからね。」
彼の表情や息遣いから興奮していることが分かる。これが、裸の関係。
「うぅ、アッアァン」
彼は私の制服を脱がすと性器を舐め回す。手馴れた手つきに私の体は感じてしまう。
「きも、ちぃ」
こんな感情になったのは初めてだった。性的なことなんて忙しすぎて興味なかった。だけど、変なものが私の中をおかしくさせていた。
なんなの、この感覚。これがセックス。
私を舐め回し飽きた彼は濡れた私の性器に自分の性器を挿入する。
「ン、ゥンン、」
少しの痛みが私の体に走る。だけどそんなことよりも初めて感じるこの気持ちのよい感覚に私の心は壊れてしまいそうだった。
パンパンとお互いの火照った体がぶつかりあう。
「外に出すね。」
私はリードされるがままにセックスが終わっていた。
「じゃあこれは約束の2万5000円ね。」
私は初めての快感で頭が回っていなかった。こんな気持ちよくなっているのに、こんなに大金まで手に入るなんて…
私はホテル前で彼と別れると浜松駅方面へと歩き出す。
ふと前を見ると見知った顔と制服があった。
あの人、確か同じクラスの落合さんでしたっけ。もしかして、見られてた!?
私は動揺しながらも気づいていない振りをして足早にその場を立ち去った。
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