屋上には青春など詰まってはいない

「オタク1匹ゲット〜」

彼女の顔には笑顔が溢れていた。


あれ?俺なにか騙された?


「えっと、3階渡り廊下は工事だから入っちゃダメって言われてたよね?忘れちゃった?」


「忘れるわけないじゃん。君こそなんでここにいるのさ?」


「いやいや、君を帰らせるためだよ。危ないから帰ろ?」


「うーん、じゃあ私としよ?そのために君をここまでおびき寄せたんだし。」


「おびき、寄せる?」


「そうだよ。昨日から私に仕組まれてたの。」


昨日…あ、あの時アニメイトで隣の棚見てた美少女か!


「もしかして昨日アニメイトで。」


「せいかーい、今回は君のことを狙ってたって訳。」


なん、だと…俺はここにおびき寄せられたのか。


「それで、俺に何の用だ?目的を教えてくれよ。」


「だから、私としよ?」


「だから何を?」


「そのままの意味だよ。私の欲を満たして欲しいの。」


は?え?何を言っているんだこいつは。


「なんで、俺なのさ。他にもかっこいいやつなんて沢山いただろ?」


「オタクなら童貞でしょ?それに特別感から周りに話さない。話す相手もそんなにいないと思うけど。」


「それで俺って訳か、でもそういうのってカップルとかがするもんだろ?愛のない行為はどうかと思うが。」


はぁ


彼女のため息が合図のように西風が吹き始める。


「生き物なんだから欲求に忠実に生きた方がいいよ。」


彼女は冷たい声で俺にそう告げた。


「愛なんて言葉は自分の欲求を正当化するための綺麗事なんだよ。」


なんでそんなこと言えるんだ。こいつは


「それは、違うだろ。だって愛してる人と一緒にいれば楽しいし幸せじゃんか。性欲だけでカップルになってるわけじゃないと思うぞ。」


「じゃあ付き合ったことある?」


「それは…」


「ほら、ないじゃん。」


クソ、言葉も出ない…

画面の中ならいるんだぞ?ほんとだぞ?

ごめん…悲しくなってきた。


「だから、私を好きにしていいから満たしてよ。」


「それは、俺には無理だ。」


「怖いの?大丈夫だよ私がリードしてあげる。」


「それでも、無理だ。」


「どうして?」


彼女は俺に近寄ってくる。


「そもそも俺は君のことを知らなすぎる。」


「そうだね。じゃあ軽く自己紹介。私の名前は葛原夢乃。クラスは2年5組で部活はしてない。」


「俺は落合晴也。クラスは2年7組部活は写真部だ。」


「写真部かぁいいねぇ今度私の写真でも撮ってよ。」


「急だな。別にいいけどさ。」


俺、陰キャだからコミュ力ないよ。

この人怖いよほんと。


「じゃあ、そんなに無理って言うんならさ。私に愛を教えてよ。」


「え?」


何言ってるのこの人。


「だって愛について知ってるってことでしょ?」


「そりゃ少しはわかるけどさ。」


全部片思いだけどな。

そして気づいた頃には距離を取られてて俺の恋は沈んでいくんだ。

俺何もしてないぞ…


「じゃあ決まりね。期限は1週間。」


「期限まで決めるの!?」


「当たり前、そんなに長く私の欲もたないから。それすぎたら問答無用で私としてもらうから覚悟して。」


一方的すぎるだろ…


こうして謎の美少女、葛原夢乃の無茶ぶりに付き合うことになってしまった。


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