第15話 札幌駅占拠
「ん?」
先日の一件以降、確かに治安は多少悪くなったが、それでもこういったチンピラ程度なら強化された見回りの軍部の人間で十分対処可能だろう。
「なあ、優柰。どうなると思う?」
「そうだね~、警備員とか僕達と同じ学生も多いし犠牲者ゼロで制圧できる...と思うけど。あっちがノープランかどうかによるかな」
「何ベラベラ喋ってやがる!!静かにしろ!」
「へーい」
力ない返事と共に、脱力した手を上に上げ抵抗の意思は無いことを示す。その態度には特に反応を示さず、何やら店員に指示をしている。
───俺らの制服見て何も反応しない辺り、何かあるな
流石に札幌駅を占拠したとなるとただのチンピラの集まりではないだろう。
「ここは僕がやろう、異能を使う」
「!?何言ってる...お前に異能は───」
「【
「こんなことをしても無駄さァ...」
拘束された内の一人が笑みを浮かべる。
「この駅には何十と仲間がいる。それに...あれを使えば被害は駅だけじゃァ済まないぜ?」
「あれ、とはなんだ」
「クックック...そいつァ餌だよ」
「っな!あれをここで使う気か!!」
「餌...ってなんだ?」
席から聞き耳を立てていた
「業界用語よ。裂界を強制的に引き起こす成分が含まれた結晶、
「裂界...確か領域が現れる現象のことか。あの言葉がブラフじゃないんだとしたら、まずいなんてもんじゃねぇぞ」
そう呟いて席を立ち
「それを使ったらどうなるか、知らない訳じゃないだろ!仲間はあと何人いる!場所は!」
「悪いが俺達はただのチンピラじゃァない。わかってるだろぉ?お•坊•っ•ち•ゃ•ま」
その言葉を合図に徐に口を動かし、何かを噛み砕き飲み込んだ。数秒苦しむ様を見せ、脱力した。奴らに息は無く、脈もない。
「自害したってのか...」
「そう、みたいだね」
二人は唖然として言葉が出なかった。
「二人共、どうします?」
「...僕らでどうにかするしかない。まずはこの場を収めよう」
そう言って
「僕らは領域探査学院の生徒です。この場は一先ず安全になりました!ですが、まだ奴らがこの駅に潜んでいる可能性があります。なので、皆さんはまだこの場に留まっていて下さい!」
彼の呼び掛けで緊張の糸が切れたのか、皆それぞれ肩の力を抜き安堵の表情を浮かべる。
「優柰、どうする。どう炙り出すつもりだ」
「落ち着いて氷継、それなら大丈夫だよ。どうせあっちからアクションがあるさ」
その言葉の数秒後、館内放送が流れ首謀者とおぼしき人物の声が響く。
『ここ札幌駅は我らが占拠した。我らの要求をのまなければ、この駅に餌を撒き、外界と接続させる。何が起こるかは重々承知している。あの時の大阪府と同じ末路を辿りたくなくば、
「淵核産器ぃ??なんだその中二病チックな兵器は」
「氷継、意思の宿る武具を知ってるかい」
「ん?ああ、中学の時の歴史と国語に出てきたな...確か、魂の込められた武具には精霊が宿る。そしてその精霊と契約をした者には絶大な力が与えられる。その名を
「よく覚えてるね...。そう、そしてその武具の大元でそれを産み出す為の器、それが淵核産器。もしそれが奴らに渡れば大変だよ」
「だけど、継願具を作るために必要な人間がいない。魂込めるなんて、気合いでどうこうできるもんじゃないだろ」
しばしの沈黙の後、
「継願具は名匠だけが作れる訳じゃないんだ。淵核産器はある一定のレベルに達している武具に、強制的に精霊―――魂を植え付けられるんだ」
「......まじかよ。誰にでも使える代物ってわけだな、淵核産器ってのは。まあ、色んなもん無視すればだけど」
冷や汗が
「うん。この放送、たぶんもう外には伝わってるはずだけど、僕らでやるしかないと思う。外部からは下手に手出しできないだろうし」
無言で頷き、人が集められているであろう
途中、武装した襲撃者がちらほら点在していたが、
一階に到着し、広場が見える位置にあった遮蔽物へと身を隠して様子を伺う。広場には無数の人が魔法によって手足を拘束され、中心に立つ襲撃者に怯えている。その中には探査学院の生徒もおり、ただただ恐怖しているだけだった。
「どうする...。うちの学院の奴らまで捕まってるぞ」
若干顔をひきつらせながら隣にいる
「どうもこうもない気もするけど......。いっそ真正面から行ってみるしかないんじゃないかな」
「おいおい、例のクリスタルもあるしその選択を危険だろ」
「他に案がない...と、言うより僕らはあくまで対化物専門だからね。対人となるとそうするしかないよ。それじゃ、行こうか!」
「はぁ~...お前って頭脳派に見えてわりかし脳筋だよなぁっと」
二人は立ち上がって剣を抜く。三つの刃が窓から差し込む光で照らされ、輝きを放つ。
二人に気付いた襲撃者達数名が各々の武器を構えて走り寄ってくる。
「お先にどうぞ」
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
そう言って
「
常磐色の光が九つの斬撃と共に輝く。襲い掛かる奴らの持つ武器だけに刃を当て、手から弾きそのまま異能で拘束した。
「ッガ!」
「悪いけど君達に自決はさせないよ」
異能で産み出した鎖を口に咥えさせ、薬を飲ませないように対策する。
「あーあ、口にそんなもん咥えさせるなよな...」
「これくらいがお似合いだよ」
「ははっ。そういうとこほんと好きだわ」
領域を統べる英雄譚 NoiR/ノワール @SY-07
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