第21話 必殺技?
残りの金で京羽用の杖を手に入れ、一応の装備は整ったことになる。
ラナに関しては騎士団から支給のレーザープレートアーマーやロングソードがあり、ドラゴニックガードの存在がでかい。
となると一番中途半端なのが俺ということになるわけで。一応戦術スタイルのシミュレーションは行っているがいずれ実戦で試してみたいと思う。
装備チェックを兼ねてあの初心者用ダンジョンに潜るとまた魔石をうまいことドロップしてくれる。
京羽も壁や天井を利用しながら、アクアショットという高水圧の水を放つ魔法やアイスバレットという氷の弾丸を放つ魔法を駆使している。
そして、地下2階、ここの最下層になるが現れたレッサーゴブリンを2匹を相手に、俺は兼ねてから頭の中で描いてきたあの技を試すことにした。
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「カゲミツ様、いったい何が起こったんですか!?」
「ご主人様すごい!」
2人は褒めてくれるのはうれしいけど、まだ慣れていないこともあって精度が甘い。
だが使いこなせれば、かなり優秀な攻撃手段となるという手応えを得られた。
使いこなせればの話だが、運動神経は普通からやや悪いほうな俺にとっては修行時間を作らないといけないな。
そこでレッサーゴブリン相手にドヤっていても仕方ないと思い、次のランクである冒険者ギルドの初心者用ダンジョンへ入ることになった。
ここにはジャイアントバットやスケルトン、ゴブリン、ゾンビ、コボルト、スライムやローパー、モゲランファイターなどが出現するらしい。
低階層で連携を確認しつつ、決め技の実戦練習をしていくことにする。
ルナバルド迷宮と呼ばれるこのダンジョンも、構造形態は以前のダンジョンに近い。
だがあそことは異なり地下一階でも普通に死傷者が出るレベルなのだ。
さっそく曲がり角から出てきたのは、カラカラと音を立てながら不気味に黒紫色に光る眼を漂わせるスケルトンだ。
動く骨格標本そのものであるが、右手に錆びた直剣を持ち、こん棒を持っている個体までいる。
「カゲミツ様、ここは私が!」
3体のスケルトン相手に怯むことなく斬りかかるラナの勇姿は、まるで宗教画のような荘厳さすら感じてしまう。
美少女だからさらに絵になるというか、カイトシールド型へ盾を変形させると京羽が俺の肩へちょんと飛び乗ってから跳躍する。
「アイスバレット!」
小さな京羽サイズの杖の先端から氷の弾丸が発射される。一発は肋骨を砕くがもう一発はするりと何もない脇腹をすり抜けてしまった。
「骨だから抜けちゃうの!」
大丈夫だよ京羽ちゃん!
ラナが引きつけているスケルトンの右腕をソードブレイカーで叩き折ると、動きに合わせもう一体へシールドバッシュをしかけてくれた。
やや距離の離れた一体が獲物を見極めようとしていた隙を見て俺は仕掛けてみた。
タン・・タン・・・・タタン!
そう、このリズムだ。
いける!
豪快に何かが砕ける音が聞こえ、スケルトンがバラバラの骨片となって宙を舞い、ラナが難なく引きつけた二体を切り倒す。
京羽ちゃんが喜びラナの笑顔が周囲に広がると、不死の魔物がいたとは思えぬほどの爽やかで清浄な空間を作っていく。
タン・・タン・・・・タタン!
これを忘れちゃだめだ……ん?
なんか別のリズムに似てる気がする……えっと、 萌え・・萌え・・・・キュン! これだ!
どうせ脳内発声だからこっちでいくか。
地下一階をぐるりとしたところで京羽のレベルが11へ到達した。
やっぱり早いな。ステータス確認などは後でするとして、一度街へ帰ることにしよう。
スケルトンやゴブリン、そしてスライムの魔石も入手できたから金策としても悪くない。
ラナがご機嫌で鼻歌を唄っていたが、どうせ寄ってくる魔物は弱い連中ばかりだろう。
そう思っていた矢先だった。
曲がり角から見覚えのある連中がぬっとあらわれた。
例のヤンキーグループの一団だった。 4人組みで男3女1 リーダーの奴だけ体格が良く目つきが鬼のように怖い!
装備はまさに世紀末覇者伝説を地で行く ひゃっはー!な荒くれ装備。
釘を打ち付けたこん棒や斧を振り回している様子が目に浮かぶようだ。
「てめえは、同じ召喚組か」
「は、はい」
待てよ?高校生ってことは俺より年下じゃね? でも素直にはいと言ってしまう自分が情けない。
「邪魔だけはすんな根暗野郎、おいちび共遅れたら売り飛ばすぞ!」
「「「はい!」」」
3人の犬人族の奴隷たちがせっせと大きなリュックを背負いながら後を追う。そして部下ヤンキーたちのオラ付いた視線が突き刺さる。
異世界転移したら、職業「陰キャ」だった件 鈴片ひかり @mifuyuid
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