第20話 装備を買いに行こう
いくつか気になる点がある。
まず京羽は呪文と機動力を生かしたスタイルであろう。かく乱と牽制、
やや珍しいスタイルだが、高機動型魔法使いで強行偵察が可能とあれば優秀すぎる。
聞いた話じゃ最後まで売れ残りだったというから分からない。最上級のあたり物件だと思うが。
京羽の場合は魔法系の補助防具で機動力を損なわないようにしてあげたい。
ラナはまさに騎士タイプとして前衛で戦ってもらいたいものだ。
すると必然的にアタッカーとして、俺がさらに動きを洗練させていく必要がある。
閃影の篭手をもっと使いこなさないと、そもそも陰キャに期待すんなって話なんだよな。
「あの、私って重い物持てないだけどここにいていいのかな」
京羽ちゃんそんなこと言わないで! そこで笑顔を見せてくれているだけで俺のMPが高まっていくからいいの!
「この際ラナにも知っておいてもらおうと思うんだけど、俺の使う影形術の一つがこれだ。
ぽいっと腰につけていた黒革の革袋をラナに手当たす。
「これどうしたんですか? たまにごそごそしているようですけど、あまり大きくないですよね」
「その中にこれをしまってみてくれ」「え?」
手渡したのは明らかにサイズ違いである俺のライトレザーアーマーだ。ベッドサイドに立てかけて置いた物を取り出した。
「カゲミツ様ぁそんないじわるしないでください。どう見たって入りませんよ」
「いいから入れてみてくれ」
こいつバカなんじゃないの! って目で俺を見たラナだが、渋々無理やり押し込もうとしてするっと中に消えてしまったショックで尻もちをついてあわわと変な声をあげている。
「き、きえたーー!」
京羽ちゃんかわゆい!
「か、カゲミツ様これは!?」
「俺の影形術で作った収納袋だ。この中にはそこのベッドぐらいの荷物が4つほど入ってるぞ」
「しゅ、しゅごいいいいいいい!」
京羽が飛び上がって小さな手をパチパチさせて驚いてる。
「だから京羽、お前が荷物持ちで苦労することはないんだ。その敏捷さや気配察知の能力の素晴らしさを俺は理解しているつもりだ」
「ご、ご主人さまああ!」ぴょーんっと俺の胸に飛び込んできたこのちいさくも柔らかくかわいい存在に俺の精神が癒される。
ふわりと優しい温もりが胸へ流れ込む。
< レアスキル 【 陰キャの絆 】 を獲得しました >
んん!?
< 陰キャが心を許して話せる3人以上のコミュニティーが構築された場合、通常のパーティー補正が数倍になる効果です>
それってすごくね!?
< 補助系支援魔法の効果が2倍から3倍になります、また経験補正による経験値増加効果が3倍に底上げされます>
やっべ、これチートきたんじゃね!?
まあ喜ぶ京羽ちゃんの笑顔も見られたからよしとしよう。
◇
その足で俺たちは旅支度と装備新調のため買い物に出かけた。まず魔石を専門店で引き取ってもらうと店主はかなり驚いていた。
丸顔でつるぴか頭の人が良さそうな店主は、一個一個を確認しつつたまげたわ~と改めて俺たちに視線を移す。
「魔石は魔物ごとに特製があるんだがね、低位の魔物が落とす魔石はそれなりに需要が高いが落とす確率も低いんだよ。こんだけ持ってきた冒険者は初めてだわ」
ん? ちょっとおかしいな。
ほぼ毎回魔石を落としていたような気がするぞ。ラナが何か言おうとしたので制止し、使用する用途もないので全部を引き取ってもらうことにする。
「全部で85個、なら85000レーネでどうじゃ?」「はちまんごせん! すごい!」
京羽ちゃん喜んでくれた~!
「それでいいよ」
親父が俺の用意した革袋に金を入れてくれているが、これで当座の資金と合わせて10万レーネ近くの資金を得ることができた。
魔石のドロップ率がこのままならまた利用することになるかもしれないので、ラナに愛想を振りまいてもらおう。
さて、そうなると不足しているのは俺の武器、防具、そして京羽ちゃんの装備だな。
すぐさま武具店へ向かうと装備できそうな物フィルターをUIに登録し店内を物色するのだが。
不可不可不可不可不可……
短剣やナイフは可能だが、それ以外には? 装備適正Aが一つだけある。
< ソードブレイカー 装備適正A 品質A >
やや黒っぽい片刃の大型短剣に見えるが、刃の反対側に大きな溝が何本も入っておりそこで敵の刃をへし折るギミックになっている。
柄の握りもしっくりでまさに俺のために造られたような気になってくる。
価格は3000レーネ? かなり安いぞ。他の武器が品質Cが並ぶのに。呪いもないみたいだからこれでいっか。
そして本題の京羽ちゃんの装備でーす!
ラナがついてあれこれ見繕っているがどうにもこうにもサイズが合わない。
すると店主がこれはどうだいと声をかけてくれる。
「貴族が赤ん坊を守るためにつけさせていた魔法のメダルなんだがね、外部からの衝撃を防ぐ効果があるそうなんだ。実際馬車に撥ねられてもケロッとしていたって話があるぐらいだよ」
「それ、いくらですか?」
「そうだな、貴族の払い下げ品だがその子のサイズなら装備できるだろう、6万レーネなら売ってもいいぞ」
「ろ、ろくまん~!!」
「ひええええ!」
2人は驚いていたが、これは必須の買い物だ。ここで逃したら手に入らない可能性すらある。
「買おう」
「お、旦那見た目は暗そうだが見る目はあるね、そのソードブレイカーも合わせて6万レーネでサービスするぜ」
なんと俺の武器がおまけ品扱いで手に入った! 京羽ちゃんはおっかなびっくりして装備しているが、大きなネックレスタイプで重さもたいしてないらしい。
「ご、ご主人様ぁ……」
「気にしてるの?」
「うん」
「大丈夫……安全が重要だから」
もっと気が利いたことが言えないのか俺は!
「京羽ちゃん、カゲミツ様は京羽ちゃんが喜んでくれてとってもうれしそうだよ。目つき悪くても分かるんですからね」
ラナナイスフォロー。目つき悪いの事実なので構いません。
申し訳なさそうにしながらも、京羽ちゃんが俺の肩に乗って甘えてくれるのは素直にうれしかった。
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