第19話 新たな仲間
城の無機質な圧迫感が漂うあの個室よりランクは落ちるが、勇者騎士団が宿から借り上げた部屋は中々に居心地が良かった。ベッドは多少固いが窓から差し込む日差しが適度に影を作ってくれるし木の質感も気持ちを落ち着かせてくれる。
広めの部屋なので調理器具をなんとかすれば自炊もできると思う。
これから妖邪王復活までの半年、いかにして過ごすかが大事だな。
陽キャたちと行動を共にすることがなくなってほっとしているが、彼らが連れて行った奴隷というのが気になった。
ラナから聞いた話だと、陽キャたちはイケメン獣人を、バカップルは猫人族の双子の子供を、そしてヤンキーたちは怯える犬人族の三兄弟をこきつかってやる! と連れ帰ったらしい。
あのオラついた連中のことだ。いじめていなければいいんだけど……
そしてラナの隣でぬいぐるみのようにちょこんと座っているこの小狐人族、恐らく勇者神殿が嫌がらせに押し付けたのだろう。
やはり奴隷が担当するのは荷物持ちだからだ。
「カゲミツ様、この子名前が無くて数字で呼ばれていたみたいなんです」
潤んだ大きな瞳が怯えと戸惑いの色を滲ませている。
俺の見た目ならば警戒して近づきたくないって思うの分かるよな。
「名前……欲しい?」
こくんと小さく頷いただけでもうたまりません! ああ抱きしめたい!
大事な事だから言っておくが幼女趣味はないし、おっぱいの大きなお姉さんタイプが好きなことは断言しておく。
でもこの湧き上がる萌えエナジーは精神を癒してくれる。
「好きな食べ物とかある? あとは、やってみたいこと」
「狼の生肉……我が同胞を喰らった奴等を喰らい返してやりたい」
「「……え?」」
あのキュートな容姿からは想像もできない言葉に度肝を抜かれる。
銀髪の長い前髪の下からのぞく目は、明らかに復讐者が漂わせる独特の光が滲んでいた。
俺がこの瞳の意味を知っている理由については、いずれ話す機会があるだろう。
「家族を殺され奴隷として売られてしまったのか?」
「うん、いつかパパとママ、そしてお姉ちゃんの仇をとるの」
「そんな、こんなかわいい子が復讐だなんて」
「復讐にかわいいもかっこいいも関係ない。いいだろう、お前の復讐の機会があれば俺は協力を約束しよう。だから俺たちに手を貸しくれないか?」
このときのギラリと刃のような鋭さを発した小狐人族の少女の思いが、心へ一歩踏み込んだ気がした。
「わかった。けど奴隷なんだから命令すればいいのに。従えって」
「ん~、やっぱり名前つけようじゃないか。女の子で狐となれば、葛の葉が浮かぶけど……そうだ、両親から呼ばれていた名前はないのか?」
するとラナが悔しそうに呟くのだった。どうやら想像以上に奴隷制度への嫌悪感が根付いているのだろう、だがそこは共感できるポイントではある。
「奴隷契約の魔法では以前使っていた本名を名乗ることが許されないのです……ひどすぎる」
「ラナお姉さんは奴隷のことをすごく考えてくれてるのね。そういう人がいるところにこれて、ラッキーだったかも」
ここでようやくにこりと笑顔を見せてくれる。これだけでぱっと花が咲いたような気持ちになるのは不思議だ。
「なあ……
「京羽ちゃん、かわいいかも!」
すると徐々に名前の響きが血管を通して全身に行き渡ったかのように、ほわっと溶けてしまいたくなるほどに優しい笑みが浮かぶ。
「うん、その名前……好き」
「京羽、よろしくな」
「よろしくお願いします、ご主人様」
「そんな言い方しなくていい、カゲミツって呼び捨てに」
「いけませんよカゲミツ様、そんなのことをしたら無礼な奴隷だって怒られるのは京羽ちゃんなんですからね?」
「そ、そういうもんなのか」
「そういうもん」
とりあえずだ、今後は戦闘をメインにこなしていかなければならず、俺のスタイルは非常に特殊なこともあり京羽にも頑張ってもらう必要がでてくる。
<鑑定スキル 発動中 >
名前:京羽 奴隷契約中 マスター:暗沢景光
年齢:13歳
種族:小狐人族 銀狐
職業:奴隷 :霊狐
レベル:5
スキル:
変化 Lv1
狐 火 Lv1
気配察知 Lv3
魔法:
アクアショットLv1
アイスバレットLv1
クイック Lv1
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