第18話 陰キャと奴隷
◇
しかしほっとしている。奴等と仲良しごっこをしてくれと言われたらMPが四桁あっても足りないだろうね。
「カゲミツ様、また一緒にいられますね。えへへへ」
おい、あまり童貞が勘違いするようなセリフを言うもんじゃありません。
「だが君たちだけで行動させては色々と分からないことも多いだろうってことで、専属の奴隷を一人付けることになった」
え!?専属の奴隷……?
奴隷って言ったのか!?
「もっとも人気で有能な奴隷は先に取られちゃったからね、今連れてくるよ」
クリィーグさんは常識があるように感じるし、物腰も他の騎士たちとは違って穏やかだ。
それでも奴隷というシステムを平然と受け止めているし、もしかしてラナもそうなのか?
「カゲミツ様の世界でも奴隷はいるんですか?」その表情はいつものはつらつさが影を潜め、俯きうなだれているように見える。
「いる……あ、いないかな」社畜は逃げることが一応できるし、奴隷じゃなくて、扱いが「畜」なんだよな……
「私たちの世界じゃ奴隷が普通にいます。廃止をしようという動きもあったけど、主に獣人族や借金を負った人たちが奴隷に落とされてしまうんです。カゲミツ様には知っておいてほしかった。私は奴隷の制度が大嫌いだって」
ガチャリとドアが開きクリィーグさんが戻って来た。頭を1ピカリさせながら。
「お待たせ、えっとこの子が君たちの奴隷だよ」
え!?
クリィーグさんの後に続いて現れたのは身長が40cm~50cm程度の子供、赤ちゃん!?って思えるほど小さい姿だった。
「小狐人族って呼ばれていてね、まあ奴隷は荷物持ちに使われることが多いけど色々役に立ってくれると思うよ」
頭が大きくデフォルメキャラのような印象を与えるその姿に、思わず俺でさえ顔が緩みにやけているのが分かる。
かわいすぎる! 大きな狐耳とふさふさの尻尾。色合い的には銀狐らしいがその耳を尻尾をもふもふしたい。
「かわいいいいい!」
俺より先に子狐を抱きしめていたのがラナだった。
ただ流されるままに抱きしめられている子狐人族の子だったが、クリィーグさんはこう告げる。
「カゲミツ君、妖邪王の討伐参加の意志は確認させてもらったよ。いいじゃないか報奨金を持ち帰ってあっちで楽しみなよ」
「スキルは分かるんですが、物質的な物を運んでくれる手段があるんですか?」
「もちろんだ。女神神殿が妖邪王討伐後に異界門を開く儀式をしてくれるそうだ。これは女神の意志が働かなければ無理なものだからね」
・帰還方法がある。
・大目標は妖邪王討伐
命の危険は付きまとうが、あのまま人を避けるように暮らしていたソロプレイモードの大学生活とこっち、どちらがいいんだろう。
小説やアニメを見ていた時は絶対異世界だろ! って思ってたけど、こうやって魔物と戦う戦場を体験してしまうと安直に異世界が良いと思えない。
「あのご、ご主人様……よろしくおねがい……します」
どうやら声色から女の子だった小狐人族の子は、ラナに抱きしめられながら俺へ挨拶してくれる。
「あ、ああ、よろしく」
いいなぁラナはモフモフできていいなぁ。俺もしてみたいなぁ。でも女の子モフモフしたら変態だし、男の子でもそれは変態になるけど……
「とりあえずだ、一週間に一回は城に来て活動報告をしてくれると助かる。妖邪王の復活は約半年後って言われてるからそれまでは修練をしてレベル上げを積むといいだろうね」
支度金として1万レーネ(約10万円)を受け取った俺は城外に用意された借り上げの宿屋の一室に案内される。ラナは自宅があるので小狐人族を一緒に住まわせるという。
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