Runaway・Dreamer
十七夜 蒼
The Real
「暇だ」
川原に寝転がり空を見ている彼は少年。ただただこのありふれた平凡に飽きている、普通の少年だ。
普通だからこそ、非日常に憧れる。では、実際に非日常が起きたらどうなるのか……。
「……て!……だろ……が!」
「……ん?」
声がした方向を見ると、大男二人(もちろん魔法を使っている)に追いかけられている、一人の少女(手錠をしている。奴隷かなにかか?)がいた。
「なるほど、商品になりたくなくて逃げているのか……?」
そう、この非日常は彼女……名もなき奴隷少女との出会いから始まった。
~始まり The Real~
「おい、そこのおにぃさんたち」
「ああん?うるせえなガキ!今アイツを追いかけてるんだよ!」
少年の方をちらりと見て、そのまま走り出す男たち。真面目に相手にしてないようだ。
「いやさ、おにぃさんたち魔法使ってるのに魔法を使っていない彼女に追いつけて無いんだもん。そりゃ、気になって話しかけるよ」
今度は完全に立ち止まり、ゆっくりと少年の方を見る。
「んだとテメェ!もういい!こいつをとっちめて追いかけるぞ!」
「異論なしだぜ!」
「ふっ……!」
少年は、逃げた。大男が襲いかかろうと手のひらの炎を上げた瞬間に、体を180度回転させ、まるでピンポンダッシュをする子供のように、逃げた。
「全く……奴隷制度自体は否定しないけど、目の前で女の子が可哀想な目にあってたら助けるよな……な?」
大男たちは呆気に取られた……が、すぐさまこっちへ炎を投げてくる。
「おぅおぅ、怖いねぇ……
ならこっちも!『Runaway・Dream《ラナウェイ・ドリーム》』!」
Runaway・Dream。それは彼が物心つく頃には使えていた魔法。彼以外に使うものは見たことがなく、そもそも存在する魔法なのかすらわからない。なぜなら……
「んなっ!?お、おい…!」
「な、な……
何もしていないのに、炎が勝手に地面へ逸れただとっ!?」
「んー……今回はこんな感じで逃げ切れるわけか」
彼が『Runaway・Dream』と命名したこの力。彼の強運が引き出す『逃げる力』か、超次元の存在が彼を『逃がす力』か……。
言えることはただ一つ!
逃げるとき、どんな状況でも逃げることが出来るッ!
「……さて、今回も逃げることができた。あの女の子も逃げてたら良いけど」
家へ帰る小学生のように、ゆっくりと歩く少年。
「ん?あれは……」
彼は後ろを振り返る。そしてもう一度前を向く。
「おいおい、どういうことだ?」
そう、目の前には先程まで少年が寝転がっていた川原があった。
「魔法か?それとも俺が迷っただけか?」
「……て!……だろ……が!」
「……おいおい、嘘だろ?」
声がした方向を見ると……
大男が二人いた。
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