Runaway・Runaway

「なるほ、ど……」


 取り敢えずエスに全部話した。


「……これ以上逃げたら、めっですよ」


「逃げてぇ……あ、すみませんすみません!嘘です!いや嘘ではないけど!」


 逃げたい宣言したら思いっきり足でお腹踏んできたよ、エス……


「だいたい!その話によ、ると私から一回逃げてるじゃあ、りませんか!


 サイテーです!」


「うっ……だってさ、逃げ癖があって得意なことも無いしむしろ人並みに出来ないことが多い俺だぞ?


 逃げても仕方ないだろ」


「それでもっ!!」


「……」


 エスは、涙をポロポロと流しながら声を張り上げて、言う。


「それでも、命を捨てないでくださ、い!私は、私達は絶対貴方から、離れませんから!」


「その言葉は嬉しいし、こんな可愛い子二人(リアルのエスとこっちのエス)に好かれるのはいい気分だが、逃げたいものは逃げたいんだよ」


 そうこう話しているうちに、命がそろそろ尽きるのか世界が崩れ始めてきた。


「……そうやって逃げるんなら、私だってやってやります」


「こんなだらしない男にそんな決意を抱くんじゃないよ」


「いえ!絶対にやってやります!」


 涙を拭い、今までで一番のキリッとした……美しく、カッコいい顔で、エスは決意を掲げる。


「絶対、私達の家に戻ってきてもらいますから!

 死んだとしても生き返らせますから!」


「いやいや、生き返らせるとかそんな魔法みたいなことあるわけないだろ」


「やってみせます!というか、やります!」


「……精々復活させられないように祈っておきます、と」


 世界が、光に包まれる。


「義務から逃げ、最愛の人からも逃げ、そして人生からも逃げる……うん、我ながら中々一貫した人生だ(褒められることかどうかは別として)」




 そして、そして、そして……





「はいはーい、閻魔だよぉー」


 気がつけば法廷みたいな場所にいた。


 普通の法廷と違うところといえば、石で出来てたり、周りが炎で燃えてたり、金髪ロリが裁判官だったり……


 あの閻魔を名乗る金髪ロリ曰く、ここは地獄で、俺は地獄行きらしい。


「……地獄行きなのか?俺は」


「もっちろんだよ、自分で命落としたんだし、何もかもから逃げたんだし」


「……」







「せ、先生!―――さんの心肺が!」


「っ!早く雷魔法と圧迫魔法を!」




 私は、ただただ祈ることしかできなかった。


 彼が生きていることを、彼がこの世からいなくならないことを。


 祈って、祈って、数時間が経過した頃、報告された。



「なんとか一命をとりとめました」


「……よ、よがっだぁぁぁぁ!」


 私は周りの目などを気にせず(そもそも思考から抜け落ちていたけど)その場で崩れ落ちて泣きじゃくった。





 数ヶ月後



「いや、閻魔って金髪ロリなんだな」


「え、そうなんですか!?」


 結局俺は、夢の中のエスの決意のせいか、一命をとりとめた……


 というより、俺は人生から逃げようとしたが地獄のほうがきつそうだったので逃げ戻って来たというのが正しいのだろうが。


「改めて自分のクズっぷりを思い知らされるよ」


「元々です」


「うっ……」


 何はともあれ。


 自分勝手で壮大でもないこの物語は幕を閉じる。


 この後俺は嫌々冒険者として魔物と戦ってたら死んで、また閻魔様から逃げたりしたりしたが、また別のお話……というか、その話を書くことから逃げさせていただきますっ!


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Runaway・Dreamer 十七夜 蒼 @SPUR514

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