今日は、アレが...食いたい。
@huni866
とんかつ定食
今日は、アレが食べたい。
鼻をくすぐる、香ばしい匂いに
ジュワワヮァ...
と鳴る、耳ざわりのイイ油の音。
それから少しすると
油の海から ザバッ と引き揚げられ
黄金色の衣を纏い鎮座する...
油を少し落としてから
軽快に鳴り響く音と共に、銀に鋭く光る包丁が通る。
ザクッ...ザクッ...
一つ、また一つと。
切り揃えられたものの断面には
ほんのり肉汁が溢れ、桃色に艶々と輝いている。
ゴクリ...
思わず出た唾を、飲み込んだ。
そうして待っていると
遂に、私の目の前に現れた。
白く光り輝く白米、ゆらゆらと踊るワカメが入った味噌汁。
主菜を引き立てる、ほど良い酸味と甘味をもつソース。
青々としたキャベツに、金色の衣を纏う本日の主人公。
艶やかな黄金色の衣で着飾っている、
美しく輝く肉の面が
まるで早く食べろと言わんばかりに
こちらを見ている。
「...いただきます」
待ちきれない私は、礼と同時に箸を取り
黄金色を纏うものを、箸で零れ落ちぬよう
しっかりつかむ。
先ずはそのまま、一口。
ザクッ!
と軽やかな音が鳴った。
音と共に口の中へ芳醇に広がる、肉と油の旨味。
お次はソースに絡めて
ザクッ!
旨味をより昇華するかのような
甘酸っぱい味わいのソースが口の中に広がっていく。
おっと、傍にいる此奴も忘れてはいけない。
瑞々しく輝く緑の奴
そう、キャベツだ。
肉と共に食う。
それだけで少しクドかった油も
さっぱりとした キャベツと絡み合い
軽やかに食える。
シャキッ ザクッ!
また一口...
シャキッ ザクッ!
また、一口......
――カツンッ
気がつけば、さっきまでキャベツが居た場所に
箸が当たっていた。
いつの間に...
まだ主役の料理は半分程残っている。
お次は、何と食べるか。
ふと、手に温かい空気が触れた。
触れた先を見ると、白銀に輝いているもの。
白米だ。
そうだ、白米が居た。
肉と油でも最高なのに、そこに米。
肉×油×米
正しく、禁断の組み合わせである。
旨くないはずがない。
温かい炊き立ての白米と共に食う。
ザクッ......
やはり、美味い。
最後の締めは、少し残った白米と
温かい味噌汁。
少し行儀が悪いが
白米を口に入れ、味噌汁と共に併せて食う。
白米の粒と味噌の塩味が混ざり合い、
新たなコラボレーションが生まれる。
...カタンッ。
すべての食器が空になり、
私の腹も心も満たされた。
最後に最高の食事に感謝の言葉をつたえよう。
「ごちそうさまでした!」と。
今日は、アレが...食いたい。 @huni866
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます