未知通信

B国の軍事侵攻によって、「十八歳から六〇歳の男性」の出国が禁止されたA国。その前後に日本へと避難した芸術家たちは、演出家セルヒイに先導され、廃校になった校舎を使って活動を行い、それぞれの言葉で「未知通信」を発行していた。通信の読者であった瓊葩は、詩人のミハイルを心の大きな支えとするようになるが、セルヒイ達の活動の終わりが近づいていた。トランスジェンダーのための旗印。


――以下は同人誌初掲載時のあとがきです――

　エピグラフに選んだ『ブーガンヴィル』はおぞましい本である。生きることはそれだけで難問だらけの旅路であるのに、その中で人が選択した生き方を、少しも推し量ろうとせずに打ち砕いてしまうものは「自然」への信頼だ。自然な感情や自然な自己認識を迫る暴力は普遍で、その中では目が翳んでいくのも…続きを読む