第9話(第119話) 友よ、我は来たれり。
【ここまでのあらすじ】
郡山青年、弓削青年、
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毛皮のパーカーを着た、北方の民族の戦士が、エラスモテリウムに乗って、魔導科学都市ガルヴァニアポリスの首都、魔導科学都市ガルヴァニアを目指して、疾走していた。
「エラスモテリウム」とは何か?解説しよう。「エラスモテリウム」とは、現実世界の地球では、第四紀―160万年前頃―の草食動物で、現在では絶滅種である。「ユニコーン」の原型となった角を持つが、馬ではなく、
そして、この北方の民族は、極地クライオモシリに棲む、弩と呪術の使い手【
異世界は、「剣と魔法」の世界とも呼ばれるが、異世界小説のみならず、
ところで、余談だが、
そして、そのことに
その極地クライオモシリに棲む、【
「フハハハハ~。走れぇ、走れ走れ走れぇ~走るんだッ!」
と言って、自らのエラスモテリウムの脇腹を蹴り、街道を疾走させている。その暗黒騎士の名は、「テューネイ・レホㇿケウ」。
但し、「テューネイ」は、ガルヴァニアの発音であり、クライオモシリの発音では「トゥーネイ」、ヒタカミの発音だと「チューネイ」となり、【喪界】の
現実世界でも、「テュルク」が「トルコ」になったり、「チュルク」と呼ばれたりするのと、同様の理屈だそうだ。
このことからも明らかなように、【喪界】の
「レホㇿケウ」は、「
だが、この暗黒騎士は、荒々しく、猛々しく、狂気に満ちて、獰猛な荒鷲のように見える。彼は、【喪界】の常井氏とは、彼の別次元における同一人物とは思えない程、上品さの欠片も無い、生粋の戦闘民族であった。
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魔導科学都市ガルヴァニアポリスの首都、魔導科学都市ガルヴァニアの城門前広場に到着した、【
「
確か、現実世界では、ニヴフ語の挨拶で、「友よ、我は来たれり。」と訳せる
まぁ、ニヴフ語は、アイヌ語の
ゑ?何故、「友よ、我は来たれり。」等と古風な訳をしたのかだって?
それは、ニヴフ語が、古シベリア諸語と呼ばれるぐらい昔から、話されてきた言語だからというのと、話者が、【魔界】の支配者三傑の内の一人で、纏っている雰囲気に合わせた、役割語という日本語の概念とを合わせたら、そう訳すのが、妥当だろうからね。
古代中国の唐の時代、唐に朝貢に来た「流鬼国」と呼ばれる民族がいたらしく、「北は夜叉国に至り、他の三面は海」、「海の中の島に散居する」という記述があるそうだ。
この「流鬼国」の場所は、カムチャッカ半島説と、樺太説があるが、近年では、後者が有力とされ、その場合、「流鬼国」は「ニヴフ」、「夜叉国」は、セイウチの牙を交易品としていたことから、「コリャーク人」ではないかといわれている。
また、古代中国では、「
また、当時の北海道には、「オホーツク文化人」と呼ばれる民族も住んでいたらしい。これらの民族が同一であるかも、その正体すらも未だ不明であるが、ツングース系民族以外に、現在のニヴフの祖先という説もあるのだ。或いは、現存しない民族という可能性もあるが。
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さて、この来訪者に対して、魔導科学都市ガルヴァニアポリスの首都、魔導科学都市ガルヴァニアの城門の上からも、大声が放たれた。
「ようこそいらっシャッター!」
その大声と同時に、城門のシャッターが、ガラガラガシャンと音を立てて閉じられ、城門前広場は、闘技場みたいになった。先程の声は、「いらっしゃった」と「シャッター」を掛け合わせた洒落になっているのだろうが、「ようこそ」と歓迎しておきながら、「シャッター」を閉めて入城を拒否するという、矛盾した行動は何を意味するのであろうか?
【喪界】の
城門のシャッターが閉じられた直後、城門の上から何者かが飛び降りて、【
【喪界】の
それを見た【
「よォ、大統領!」
「相変わらずだな、テューネイ。」
今、ここに【魔界】の支配者三傑の内の二人が揃ったのだが、実は、この二人は、魔導科学都市ガルヴァニアポリスと極地クライオモシリの国境付近の辺境の出身であり、国境を越えた隣村で競い合ってきた、幼馴染みであり、
「執務室に閉じこもってばかりだと、体がなまっているんじゃないか?」
「確かにな。だが、だからといって貴様に遅れをとるような儂ではないぞ。」
「ほざけ。今日こそ模擬戦で、貴様の高慢さをへし折ってくれよう。」
「良かろう。武闘家として相手してやる。来いッ!我と死合え!」
「蜘蛛の
すると、【
義手や義足は、本来、手や足を失った者が、その機能を補う為に装着する物であるが、この【
「受~け~て~立~つ!出でよ、魔劍ガルヴァニア!」
ネメシス・ダムド・デーオヴォルも、ニヤリと獰猛な笑みを浮かべ、この
このデーオヴォル大統領が、【コンテナ】の術理を使い、己の影から取り出した、固有の亜空間に収納していた、魔劍ガルヴァニアは、国家名を冠した、フランベルジュである。
そして、ネメシス・ダムド・デーオヴォルは、【
フランベルジュは、刀身が波打ち、揺らめきが炎のように見える剣だが、その特殊な刀身が肉を引き裂き止血を難しくするため、ただでさえ殺傷能力が高いのに、更にその刀身に蠍の毒を塗っているのだから、その殺意は計り知れない。
彼らの関係を知らない人から見たら、本当にこの模擬戦という名の物騒な死合いが、国家首脳級の会談なのか、と
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先に仕掛けたのは、暗黒騎士テューネイの方だった。彼は、氷の
「
氷の
「
それに呼応するように、デーオヴォル大統領も
「
と、暗黒騎士テューネイと同様に、但し、こちらは
ゲームやライトノベルで、15回攻撃だとか、16連撃だとか、そういう技があるらしいが、干戈を交える彼らの演武は、更にその上を行く「別次元の領域」にある。
デーオヴォル大統領の魔劍ガルヴァニアは、1本しかないが、暗黒騎士テューネイが持つ、各々の氷の
だが、各々の氷の
しかし、この二つの欠点は相殺し合う。魔劍ガルヴァニアとの干戈を交えて、斬撃や刺突を終えた、氷の
やがて、暗黒騎士テューネイの氷の
「この儂を相手によう戦ったのう。地べたを這う者にしては、少しは手応えがあるではないか。どうやら随分と強くなったようだな。だが、まだまだだな。地を這う友よ。」
デーオヴォル大統領は、【
「いや、まだまだ小手調べ。飛行能力が貴様だけの特権だと思うなよ、蝙蝠野郎。」
「ほぅ。寝言は、飛べるようにようになった夢でも見てから言うんだな。」
「ほざいてろ。
暗黒騎士テューネイが、陰陽術の詠唱を終えると、その背中から、
「飛べるのは貴様だけではないのだよ。」
ここからは、空中戦となりそうだ。
「新たな式神と契約したということか。しかし、二重憑依だと?!かなりの高等
デーオヴォル大統領は、そう言いながら、暗黒騎士テューネイの8本の蜘蛛の脚に対抗するため、【
「ハッ。【二重魔軸】どころか、【三重魔軸】さえも、造作も無く操る貴様が、それをほざくのは、皮肉を通り越して、嫌味にしか聞こえんぞ?」
そう言って、再び、両手に氷の
「フン。【三重魔軸】程度、自家薬籠中の物としなければ、あの【死の世界の支配者】には、届かぬだろうからな。」
「確かにな。だが、そろそろ、この死合いも終わらせてやろう。」
そう言うと、暗黒騎士テューネイは、氷の
デーオヴォル大統領は、2本の氷の
「
暗黒騎士テューネイが、勝利を確信して唱えたこのアイヌ語は、和訳すると、「安らかに眠り
「
だが、デーオヴォル大統領は、どこまでも冷静だった。
「この魔劍ガルヴァニアは、ロンズデーライト製でな。貴様の氷の
暗黒騎士テューネイは、
「黙れ。だが、天より落ちるのは貴様も同様だ。」
「何ッ?!」
気が付くと、デーオヴォル大統領にも、砕けた氷の
「「ハハハハハ、アーッハッハッハッハー!!」」
二人は仲良く笑いながら、落下していく。それを人型の影の様な漆黒の存在が、ユラユラと揺らめきながら、眺めていた。
「相変わらず、戦闘能力が低いな。この異界は。」
果たして、この黒い影の様な人物は何者なのであろうか?
孤高の光と闇の相克(2022年版) 草茅危言 @souboukigen
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