入道雲

青空にふくらむ入道雲。

うつくしいけど、

雲の下では、誰かがずぶ濡れになってることをたまに思ってしまうよな。


吹く、

その風が膜のようにぬるかったから、いずれここにも入道雲がくるんだって予感して、坂の上で、夏の自転車をとめたんだ。


雲が僕を指さしている。

無言で聳える、とてつもない、未来の形の積乱雲。

きっとこのさき、僕の知らない雨が降る。


それは、真っ青な雨だろうか。

昇る、あべこべな雨だろうか。

熱く、凍える雨だろうか。

鉄の、無音の雨だろうか。


喪い、振り返らない背中をいくつ数えるのだろうか。

怯え、突き刺したナイフをその日も手放せないのだろうか。

僕は、滲んだ視界のままどうやって、道を探すのだろう?


夏の自転車をとめて、強すぎる青に、眩しすぎる白の、入道雲をみつめている。

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オタク・ポエム かぎろ @kagiro_

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