おきざりのかれは

 夜の闇の底

 側溝の下

 枯れ葉がひっそり朽ちていく

 ここへは風が連れてきた

 けれどもここに風はない

(思い出だけだ)


(ぼくは枯れ葉であなたは風)

(いまごろどこで吹いている)

(あの並木道)

(さびたブランコ)

(都市の交差点)

(雲の上)

(いまもどこかで)

(どこまでも)

(旅をつづけているのかい)

(あなたはぼくを忘れていって)

(ぼくもあなたを忘れてゆくよ)


(元気でね)


(飛べるんだってはしゃいだぼくをあなたは決して笑わなかった)


 ここは暗闇

 風はなく


 月の光がすべて

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