朝
起きた波は押せばいずれ引き、やがて必ず静まる。
それがたとえ、声無き死者の
目指す先、生者がここにもういないのならば。
ほかに生者のいなくなった戦場を、ただ一人の生者の君が征く。
威容の馬の引く、絢爛たる輿の上。
相も変わらずに、座したまま。
寝転べるほど
また派手に壊れちゃったね、と君が囁く。
いま皆に代わりを探させてて、これだけあればね、なんとでもなるとは思うけど、でも、きみ、そろそろ元の部分って、どれだけだろうね。
細く白い喉を震わせて、君が囁く。
きみがまだ動いてくれて、無念に
きみがまだ生きてた頃みたいに守っててくれて、私は嬉しいよ、と。
この戦争が終わらなければいいのにね、と君が言うのをおれは聴いている。そうしたらずっとずっと守ってくれて、何度壊れても、私が直して、もともとのきみがなくなっても、私はそれでも、きみの無念がここにあるってわかってればそれでよくて、だからずっと、ずっと、こうやって二人で、
おれはそれを聴いているけれど、返事をすることができない。
おれは君の思うようにしか動くことができない。
喉を震わせることはなく、首を振ることもない。
君はおれの無念を知っていると信じている。
そうでなければ、
けどおれはそれが嘘であることを知っている。
君がずっと間違っているとおれは知っている。
おれの無念は君と居られなかったことだからだ。君を残して先に死んでしまったことだからだ。だから隣にいられるなら、それは
だからおれは、君の願いが叶わなければいいのにと願う。戦争なんて、とっとと終わってしまえばいいとそう思う。戦争が終わって、おれが動かなくなると思って、君が声を上げて泣いて、涙を流したそのときに、それを拭い取るためにおれのことを使ってほしい。
おれはずっと、その日が来るのを待っている。
喉を震わせることのない
無念、無声、それでも言葉に溢れ 君足巳足@kimiterary @kimiterary
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