夜
そうして君は死者の軍を――群れを率いて戦場を征く。
此方の死者を率い、
声無きものを率い、まだ残る声の響く方へ。
数を増し勢いを増し。
押す波があれば圧し返すように。
引く波があれば追い潰すように。
死者に声はないが怒涛となる。
無念、無声の群が波濤を成す。
君は
威容の馬の引く絢爛たる輿の上、座したままで。
もとより彼我には戦力差があった。不利なのは此方で、有利なのが
君は戦場を塗り替える切り札だ。だから君は狙われる。
今に始まったことではなく、ずっと狙われ続けている。
あたりまえに狙われている。
刀に、槍に。それが届かぬならば、弓矢に、弾丸に。
あたりまえに晒されている。
斬らんとする、刺さんとする声に。そして撃たんとする声に。
あたりまえに、君が。
そして今や、更に苛烈に。
おれはそのあたりまえを許さない。
君はひとつ手をひらりと振るだけだ。
それだけでおれが、刀を、槍を、叩き落とす。
君は振った手をひらりと戻すだけだ。
それだけでおれが、弓矢を、弾丸を、弾き飛ばす。
君に誰が触れることも許さない。
死者の軍の成す波濤の上、船のごとく揺れる輿の上。
君に降りかかる全てを振り払う、そのためだけにおれはいる。
君もおれも、そのことをよく知っている。
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