第11話 最終話 幸せとは心が作るもの
美羽はベッドに
そう、あの時父親が渡してくれた直筆のメモだ。美羽はスマホを取り出して、
プルルル……。
──鳴った! まさか、まだ
しかし、すぐに使われてない番号だという機械的なアナウンスが流れてきた。
──そう、だよね……。
美羽は悲しく微笑んで電話を切ると、部屋の窓から夜空を見上げた。
今夜の星たちも13年前の星たちと同じように、小さいけれど力強くチカチカと
ドアの向こうで
美羽はふと思い出した。養父にはたくさん聞きたいことと感謝したいことがある。
赤ん坊の頃から今まで何不自由なく育ててくれたことはもとより、もっと大切なこと。そう、もっと感謝すべきは、本当の家族がたった1人でもこの世にいてくれたということだ。
*** エピローグ ***
美羽はその日の夜、養父の
伝説のギタリストであり作曲家として有名な
デビューすると帝翔はたちまち有名になり、ギタリスト兼シンガーソングライターとして独り立ちもした。
帝翔の妻で美羽の母親の
結子は不治の病に
しかし、子供を産むことを選んだ結子は、出産と同時に命を落としてしまった。2001年12月20日のことだった。結子は産まれたばかりの美羽の顔を見ることも抱くことも出来なかったのだ。
結子の死に自分の責任を感じ、帝翔は深い悲しみに暮れ、やがて精神を
雪の降るクリスマスイブの夜のことだった。
帝翔は、母を求めて泣き続ける生まれたばかりの赤ん坊の美羽をどうすることも出来ず、毛布にくるんで抱きかかえると、その足で当時帝翔の代わりに教会の
天乃は、その後、何年もの間、駆け落ちしてから暮らしていた長野の
美羽を大切に預かり、道信神父と共に愛情を注いで育ててくれたのが、当時まだ若かったシスター伊藤だった。
美羽が8歳になった頃、帝翔は妻を亡くした悲しみを乗り越えようと、都内に戻って新しい事務所を作り仕事を始めたが、それもつかの間、心身の無理が
両親の
いつか両親のことが理解できる歳になるまでは、いたずらに不安を与えないようにと。
決して捨てられたのではないこと、母が命をかけて美羽を愛していたこと、それだけは誤解を生まないようにと、真実を伝える機会を道信は
今まさに養父から全てを聞いた美羽だが、感謝の気持ちこそあれ、少しの
自分の生い立ちを他人と比べて悲しむよりも、今ここでこうして幸せに生きていられる自分が、どれだけ周りに愛され助けられてきたか美羽は知っている。幸せは誰かと比べて
美羽は、翌朝、いつものように顔を洗うと、鏡の前で笑顔を見せた。
「お父さん、お母さん、行ってきます!」と挨拶をして。しかし前と少し違っていたのは、いつにも増して幸せに満ち溢れた笑顔だった。
今日9月23日は裕星の誕生日。美羽は誕生日プレゼントをもう心に決めていた。今からそれを調達しに行くために早起きをしたのだ。
大きな
並べた写真を厚紙にマスキングテープで貼り付けていき、最後にそれらの厚紙を束ねて本にした。
──手作りのアルバムの完成だ。
「私からのプレゼントは、これからたくさん増えていく思い出よ」
美羽はアルバムを綺麗な
美羽は約束の時間より少し早めに寮を出た。抑えきれない幸せを胸に足取りも軽く、大切な人の笑顔を思い浮かべていた。
裕星はきっと喜んでくれるに違いない。これが裕星にとって生まれて初めてのアルバムになるのだ。
運命のツインレイシリーズpart4『涙のタイムスリップ編』終
運命のツインレイシリーズPart4『涙のタイムスリップ編』 星のりの @lino-hoshi
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