第6話 糞ころがし
私はセミの鳴き声が五月蠅い中、斜面の草の上にいた。
斜面の下の方を見ると街並みが見えて、此処は小高い場所だと思った。
細い道が幾つもあり、四角い石が幾つも建っていて墓地だと分かった。
細い道はコンクリートの平板が埋められ廻りは土になっていた。
私はその部分を上に向かって歩いていた。
あっ、見つけた、犬の糞だ! 私は前足で団子を作り始めた。
すると草の中から視線を感じた。彼女が私を見ていた。
「こっちに来なよ、一緒に造ろう」と話すと恥ずかしそうにやって来た。
スタイルとか薄い茶色の体は私の理想だった。
二人で団子を作り草の中に後足で運び食べた。
偶に私の糞で汚れた顔を拭いてくれた。これが彼女か? 夫婦かと実感した。
幸せな日々が過ぎて行ったある日、聞きなれた声がした。
父親だ! 母さんも叔父さん夫婦と従弟の麻友もいる。
父が持っているのは骨壷? そうか今日は四十九日で私の納骨式だ! それにしても麻友も高校生か? 可愛くなったな。
坊さんの経が始まった。
彼女が如何したのと聞いてきたので、親と親戚が来たと教えると紹介して欲しいと言われた。
「伯父さん、和夫兄さんはボーリングが旨いと知っていた?」
「知っていたよ、麻友、一度だけ大会があるからと見に行った事があった。デブのオカマが漬物石を持って腰を振りながらプリッと石を投げる。和夫のその姿見たら思わず笑ってしまった」
「いやだー 変な言い方、和夫兄さんにボーリングの玉を貰ったが、穴が合わないので直してくれると和夫兄さんに預けてあるけど知っている?」
「あー 家に帰ったら捜して見るよ」
(そうか、忘れていた、まだ直していなかった)
「伯父さん、和夫兄さんは彼女いた?」
「俺が知っている限りはいなかった」
「可哀そうね」
(そうだ! 彼女は今隣にいる。みんなに紹介しよう。私だって彼女位はいるということを)
二匹の糞ころがしが墓の横まで来て、従弟の麻友を見つめていた。
視線に気が付き横を向いた麻友は悲鳴を揚げよろけてしまった。
その弾みで御影石の花立てが倒れ二匹はプチッと潰れてしまった。
「何だ、麻友、びっくりさせるなよ」と父が花立てを元に戻した。
そこには無残に潰れた二匹の糞ころがしの姿があった。
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