第2話 生い立ち

 自分の遺体を見ていると自分の生い立ちが走馬灯のように思い出して来た。


肥満になり始めたのは小学校の五年生位からだった。


父親がポッチャリ体形でその遺伝だった。

あと一人っ子なので甘やかされたのが影響した。


小中学校はデブでも体が大きく苛められることはなかった。

小学校六年の時は成長が早く他の生徒より体が一回り大きくボスのような存在だったが、気が弱い性格だった。


同じクラスにもう1人体の大きい女の子がいた。


その子はデブと言うより筋肉質の体形だった。


その子とは仲が良かったが中学に入る前に転校していった。


高宮玲と言う名前だったことは覚えていた。


高校に入ると体格は皆と同じになり、ただ太っているだけになった。


席は一番後で出入の邪魔にならないように窓際だったが、窓を開けていると体臭の臭いが流れて来るから閉めろと怒鳴られた。


臭いとか暑苦しいは年がら年中言われた。


女子生徒とは一言も話さず高校を卒業した。


大学は二流の文系に入学した。


相変わらず女子学生とは話しが出来なかった。


学食で昼食を食べている時に目の前に背の高い美人が立っていた。


そして、「和夫君でしょ?」と聞かれ驚いた。


今までこんな美人とは話した事がなかった。


「はい・・・・」と答えると「私、玲、高宮玲、分る?」


「あー 玲ちゃん?」あの子がこんな美人になっていたのか? 驚いた。


「和夫君は相変わらず太っているのね」


「うん、痩せない、それより玲ちゃんもこの大学に? 玲ちゃんは頭が良いからもっと良い大学に行ったと思った」


「この大学だけど、理工学部の建築学科は私立ではトップクラスだから入ったの」


「やっぱり玲ちゃんは頭が良いね。でも理工学部は別の校舎じゃ?」


「そう、今日は学食が改装で休みなので、文化系の学食に来たの、じゃまたね」と帰って行った。


それから卒業するまで彼女と会うことは無かった。


就職活動も酷かった。相変わらずの肥満で、デブになるのは自分自身の管理が出来ていないとの理由で全て断わられた。


叔父さんが会社を経営していてコネで関連会社に就職できた。


そこでもデブが障害になり、机の位置で通路が狭くなる問題が起き、課長と机を並べるハメになった。


他の会社の営業マンが恰幅の良さから課長と間違え名刺を渡される勘違いが何回もあった。


仕事は経理で余り動きまわる事がなく七年が過ぎて、係長補佐になり女の子の部下が出来た。


その子はデブとポッチャリとの中間位で美人でもなくブスでもなく普通だった。


仕事を一緒にして好意を持つようになり、この子なら大丈夫だと思い告白したら「デブは嫌です。臭いです。それに飛堕川係長補佐の顔が嫌いです」と言われ衝撃を受け失望して家に帰って大量の飲めない酒を飲んでしまった。


その為か?・・・・・・

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