last loop: Fin
私はこの乙女ゲームが大好きだ。
そしてこのゲームのエンディングも知っている。どうすれば、そのエンディングを迎えられるかまで。
そしてそのループから抜け出すために必要な「エンドロール」をどうすれば迎えられるのか。
最初こそ、ハッピーエンドを目指していたけど、それには時間がかかり過ぎてしまう。
それにこのエンドを迎えようとすると、必然的に最難関の彼を攻略しなければならない。
ただこれは実際にやってみて、私には難しいと判断した。人の死をもう見たくないし、そこまで自分を偽り続ける労力も残っていない。
これらを踏まえて、私が最後にとった方法はこれだった。
「ねぇ、どうしたの?」
優しい声。大好きな人。
ありがとう、私と出会ってくれて。
でも、私はあなたと一緒にはいられない。
このイベントを超えた私は、それ以降の共通イベントで得られる好感度を攻略対象全員に平等に振り分けた。
誰一人として、突き抜けた好感度は作らないようにした。
特にカネミの好感度やパラメータは、このセーブデータより前にかなり上げられている可能性があったため、極力選ばないようにした。
そうすることで、彼のイベントは起こらなくなり、自然と地雷を踏むことは無くなった。
彼が私から離れていってしまうのは寂しいことだったが、心を無にして取り組んだ。
その結果、運命の日がやってきた。
私は、一回深呼吸をし扉を開いた。
当然だが、そこには誰もいない。
そう、私は【ノーマルエンド】を迎えた。
このゲームのノーマルエンドは、各攻略対象の分岐時に、誰のルートにも行けなかった場合に起きるエンディングのこと。好感度が足りなかったり、必要なイベントが回収できていなかったりすると、このエンディングになる。
このエンドは、所謂「誰にも愛されていない・必要とされなかった」という悲しいエンディングであり、その虚しさから1番つまらないエンディングと呼ばれていた(コンプするために、渋々やっていた人はいたみたい)。
ただ私がこれを選んだのには理由がある。
それは、「最短でエンディングを迎え、エンドロールが流れるから」である。
このゲームをコンプしていたから気づいたけど、何もハッピーエンドじゃないとエンドロールが流れないわけじゃない。
実はノーマルエンドでもエンドロールは流れる。
故に、ハッピーエンドまで時間をかけずにこのゲームを終了させることができる。
「分かったてたけど、やっぱり寂しいなー」
目の前が暗転する。
きっとゲームでは、今頃エンドロールが流れているだろう。
Fin
>【ED2 : 虚しさの風】がエンディングリストに追加されました
> セーブしています
> セーブが完了しました
「ねぇ、また俺に会いにきて?」
▶︎はい
続きから
理想のエンディング 名瀬きわの @kiwano
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