第二話 作業厨、初めてスライムを発見する
ダンジョンに入った俺たちは、そのまま目の前にある階段を下る。
両側の壁には半透明の薄紫に光る石が等間隔で設置されていた。
これはディーノス大森林のダンジョンにもあった明かりで、ダンジョンマスターの力で起動しているらしい。
こうして建物2階分の階段を下りた先に見えてきたのは、先ほどと同じように、光る石が等間隔で設置されている洞窟だった。
「早速結構違うな……」
俺は思わずそう呟く。
ディーノス大森林のダンジョンには、階段以外に光る明かりは設置されていなかった。
それに、こんなに沢山分かれ道もない。
ディーノス大森林のダンジョンは、1000階層もあったのに、分かれ道なんて数えるほどしかなかった。なのに、ここときたら、目に見える場所だけでも既に3か所ある。
「どうかした?」
すると、俺の呟きを聞いたのか、ニナが不思議そうにそう問いかける。
「いや、何でもない。それで、ここからはどんな感じで行くんだ?」
毎度の如く、雑に誤魔化すと、別の話題をニナに振る。
すると、ニナは顎に手を当て、少しだけ考えるような仕草をしてから口を開いた。
「そうね……取りあえず、今日は10階層まで行くつもりよ。分かれ道はいくつもあるけど、地図があるから迷う心配はないわ」
そう言って、ニナは腰のポーチから折りたたまれた地図を出す。
「地図か……」
まあ、確かに、分かれ道が多く、迷いやすいダンジョンで、地図は必須の持ち物だよな。
ディーノス大森林のダンジョンでは分かれ道が無かったせいで、すっかり失念してた。
すると、いきなりダークから念話で声をかけられる。
『お主。わしの所は人が来なさ過ぎて、生命力を全然回収できんのだぞ! 強い魔物がダンジョンを巣にするために入ってきてくれるお陰で何とか維持できておったが、それが無かったらお主が来るずっと前に維持に必要な生命力不足で崩壊しておったんじゃぞ! じゃから、ここみたいに光石を馬鹿みたいに設置したり、分かれ道を造ったり、魔道具を報酬にするといった贅沢なカスタマイズは出来んのじゃ!」
どこか嫉妬の混じったダークの叫びが、俺の頭に響き渡る。
もうちょっと静かにしてくれよ……
でも、流石にその境遇にはちょっと……いや、結構同情するな。
ダンジョンの維持は、ダンジョンに入って、死んだ生物の生命力が主だ。
それを全然回収できないあそこは、さぞ過酷だったことだろう。
『……お前も大変だったんだな。あそこから出たいと思うくらいには、ダンジョンマスターとしての生き方が嫌になっていたのか……大変だったな』
思わず、俺は同情の言葉を念話でダークに投げかける。
すると、ダークはどこか驚いたような反応をすると、ふんっ!と息を吐く。
『お主に同情されるとは思わんかった。まあ、じゃからとて、修行の手を抜くつもりはないからな!』
『それは手厳しいな』
ダークのまくしたてるような言葉に、俺は照れ隠しみたいな言い方するなぁ……と思い、内心くすっと笑う。
そして、再びニナに意識を向けた。
「じゃ、地図の通りに進むか。魔物は片っ端から片づければいいし」
そう言って、俺はダークの柄に軽く手をかける。
「そうね。頼もしいわ。まあ、10階層までは大した魔物は出てこないから、気張る必要はないわ。出てもせいぜいレベル80程度よ」
そう言ってニナは地図を広げると、前方へと意識を移す。
へ~まあ、最初はそんなもんだよな。
多分、だんだん強くなっていく感じなのだろう。
そう思いながら、俺は両肩に乗るシュガーとソルトを撫でると、ニナと共に前へ歩き出した。
数分後、俺たちは早速このダンジョン初の魔物と遭遇した。
その魔物の名は――
「す、スライムか?」
「ええ、そうよ。あ、魔石は売れないから、魔石ごと斬っちゃっていいわよ」
思わず困惑する俺に、ニナは当然と言った様子で答える。
いや、だって最初に出会った魔物がスライムとか、いくらこの辺の階層で出てくる魔物が強くないとあらかじめ知っていたとしても、困惑と言うか、拍子抜けしてしまうものだ。
てか、何気にこの世界に来て、スライムと遭遇したのは初めてだな。
折角だし、鑑定してみよう。
そう思い、俺は前方にいる体長30cmほどの青くて丸いゼリーのような魔物、スライムに鑑定を使う。
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・名前 なし
・年齢 不明
・性別 なし
・種族 ブルースライム
・レベル 1
・状態 健康
身体能力
・体力 60/60
・魔力 10/10
・攻撃 20
・防護 30
・俊敏 50
パッシブスキル
・物理攻撃耐性レベル1
アクティブスキル
・溶解レベル1
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……すげぇ。
なんか、逆に新鮮だ。
ここまで弱いステータスを見ることなんて、逆に少ないのではないかと思う。
因みに俺がステータスを見た生物の中で、こいつの次に弱かったのは、転生したばかりの俺なんだよね。
そんなことを思っていると――
「きゅっ きゅっ きゅっー!」
スライムがぽよんぽよんと可愛らしく上下に伸び縮みしたかと思えば、その反動で一気に跳び上がり、俺に襲い掛かる。
だが――
「すまんな」
一言そう呟くと同時に、神速の居合切りで襲い掛かってきたスライムを魔石ごと一刀両断した。
斬られたスライムは、そのままぽとっと地面に落ちる。そして、時間差でパカッと割れた。
「流石レインね。凄い剣技」
ニナはふふっと笑うと、そう言う。
「ありがとな。じゃ、このまま行くか」
「そうね。この調子なら、7時間ほどで10階層に行けるかしら?」
「そうか」
短く頷くと、俺は再び前へ向かって歩き出した。
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皆さん、お久しぶりです。
本日、ようやく定期テストが終わったので、更新することが出来ました!
頼む! いい点数であってくれえええ!!!
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