誠意を尽くせばどんな人だってわかってくれるっていうけれど、いったい誠意を尽くすってどうすればいいんだろう。いくら僕が君のこと好きになったって、君が僕を好きになってくれなかったり、他に好きな人がいたのなら、僕が君にいくらやさしくしてあげても、何でも言うことをきいてあげても、他の誰より君のことを思いつづけても、本当に誠意を尽くすってことは、そうじゃなくて、君の前から姿を消して、君に会わないことなんだろうね。いくら君のことが好きでも、君のことを好きって言わないことなんだろうね。でも、そんなときって、僕は本当にどうすればいいんだろう。ただ、じっと部屋の中にこもって、なるべく君のことを考えないようにするしかないんだろうか。そんなとき僕はどうやって生きていけばいいんだろう。何か君のことを忘れられるようなことに熱中すればいいんだろうか。でも、僕に熱中できるようなものは何もないんだ。やっぱり君のことを考えちゃう。きっとね。でも、会わなければすぐ忘れるよね。君を忘れる努力をすることが、ぼくのせいいっぱいの誠意なんだろうか。誠意を尽くせば何でもできるはずなのに、何もしないことが誠意だってこともあるんだね。何も得るものがないのに、どうして僕は誠意を尽くさなくちゃならないのだろう。努力すれば何でもできるって、みんな言うけれど、努力をしても何もできないことっていっぱいあるよね。世の中にはできる人間とできない人間がいて、できる人間は努力しなくてもできちゃうし、できない人間はいくら努力しても、いくら頑張ってもできない。世の中は不公平にできているんだ、何事にも。何で学校の先生はこのことを教えてくれないんだろう。身にしみてわかっているはずなのに。別に学校の先生だけじゃない。大人ってみんなそうなんだ。ちゃんと教えてくれれば、僕の人生、こんなに苦しまなくてもよかったのに。もっと楽に生きていられたのに。やっぱり君に会いたいんだ。別に誠意なんてどうでもかまわない。君が僕をどう思おうとかまわない。

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