椽大之筆と言って良い

丁寧な構成のダークファンタジー。
往々にして復讐系ダークファンタジーというのはその原動力となるはずの悲劇が短兵急に描かれた砂を噛んだようなものになりがちだが、この作品はその問題をどれほど暖かい生活だったか丁寧に描写することで解決してくれている。
寝鳥を刺すような帝国の所業と亡国の王女が紅涙を絞り復讐を誓う悲しみの夕暮れは涙無しには読めない。
この作品では、ファンタジーの材料でしかない魔力や戦争が作者の腕で綺麗に料理されており、作家の嘔心した跡がよく見える。
登場人物の心理描写も真に迫るものがある。
悲しいとき何を感じるか。死にたいとき何を願うか。力を得たとき何をするか。全て人生に苦しむ俺たちへの悲哀の挽歌のように感じる。
あまり聞かないような文語表現もたまに使われており、その斧鑿之痕も魅力である。
えっちなところもあるけどね。
おかげで歩きにくかったんですけど!w

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