第31話 魔王国へ……

 翌日の朝、魔王国に出発する事になったが、幹部会議の結果まずは話し合いをするべきという事で話しはまとまり、全生徒で行けば衝突は目に見えて明らかであるというので、獄門高校から拳と木戸が、髑髏ヶ峰高校から鬼嶋と副番である高田喜三郎が代表として、魔王国に出向く事となった。


「シーク」


「なんだい?」


「魔王国に行く前によぉ〜ワシらの能力を引き出したいんじゃが……」


「……確かにそうですね、用心の為そうした方が良いでしょう」


「能力?」


「拳よ、なんじゃそりゃ」


「いや〜ワシも詳しくは知らんがな」


 ────


「ほぅ〜そんな事が出来るんか?」


「にわかには、信じられんのぉ……」


「ホンマに信じてえぇんじゃろうな?」


「ワシも一回やったんじゃ、心配ないわい、ちゅう事でワシの知り合いに能力を引き出してくれる人ん所へ寄りたいんじゃが?」


「いえ、私の部下で能力付与が出来る者がいるので、その者に頼みましょう……ミゲル!」


「ハッ!」


「この四人に能力付与を」


「かしこまりました……では、どなたからやりましょうか?」


「じゃあまずは、経験者のワシからで頼む」


「かしこまりました……」


 ミゲルは拳の額に手をかざした。


「おい! 手が光っとるぞ!」


「手品か!」


「おい! 本当に大丈夫なんだろうな!」


「まぁまぁ……黙って見とれや」


(な、なんだ? 何故? どの属性も反応を示さないのだ?)


 ミゲルのかざした手の光は徐々に消えていき、完全に消えた所で能力付与の儀式は終わった。


「フゥ〜……」


「おい拳! 体なんとも無いんか!?」


「平気じゃ平気」


「ミゲル、拳さんはどんな能力なんだ?」


「そ、それが……」


「?」


「わ、分かりません」


「分からない? どういう事だ?」


「はい、他の者なら誰しもが持つ六つの能力の種、それが全く感じられないのです……」


「そ、そんなバカな!?」


「しかし……ですね」


「しかし、なんだ?」


「六つの能力の種以外にとてつもなく強力な何かを感じました」


「な、なんなんだそれは!?」


「わ、分かりません……私も感じた事がないものなので」


「……拳さん、一つ聞いていいかな?」


「なんじゃい?」


「君はこの国一番の実力を持つラングストンに勝ったと聞いているのだが?」


「おぅ、それがどうしたんじゃ?」


「い、一体どんな能力であのラングストンを倒したのかな?」


「……一回目は油断しているところを酒瓶で殴って気絶させて」


「さ、酒瓶で……」


「二回目の決闘の時は……そのサンディのギルドっちゅう職場の社長に貰った能力で」


「多分それはギルドマスターだね……一体どんな能力を貰ったんだい」


「う〜ん……精神的な物? とか何とか言っとったがそれがどうかしたんか?」


「い、いや〜なんでもない……ミ、ミゲル他の方たちにも能力付与を」


「か、かしこまりました」


 ミゲルは、他の三人にも同様に能力付与を試みたが、拳と同じく六つの能力の種が感じられなかった。


「おい! 何にも感じんぞ! ホンマに強くなったんか?」


 木戸が自分の身体を触りながら、不安そうにシークに尋ねた。


「ミゲル」


「は、はい! 確かに能力付与は成功しています」


「ふ〜ん、よう分からんがまぁええか」


「ミゲル、どうだったんだ他の三人は?」


「そ、それが……拳様と似たような感覚でした」


「そ、そうか……」


(この方達の世界は特殊なのか?)


 ──魔王国、魔王城正門


 ──ゴォゴォゴォゴォゴォ……


「うお! 何じゃこりゃ? 何もしとらんのに門が勝手に開きおったぞ!」


「ま、魔法です……ご案内します、私について来て下さい」


 拳たちは、シークを先頭に魔王城の屋敷を歩いていった。

 道中の両側には葉っぱの付いてない、枯れ果てた木々が生えている


「ふ〜ん、魔王城っちゅうだけ、中々雰囲気があるのぉ……おっ! 何じゃこりゃ?」


 城の入り口のすぐ前にはダモクレスの銅像が立っていた。


「兄の銅像です……」


「ふ〜ん、こんな奴じゃったのか……ケッ、悪趣味じゃのう……」


「……こちらへどうぞ」


 シークは城の中へ入ろうとすると、そこには二人の門番が立っていた。


「兄さんはいるか?」


「さぁ……自分で探したらいいのでは?」


「おいコラ……礼儀がなっちょらんな……シークはオドレらの上司じゃろうが」


「拳さん、いいんです……さぁ中へ」


「おっと、アンタらはここの者じゃねぇな」


「あぁん?」


「ここは、この世界を支配するダモクレス様のお屋敷だ、貴様らのような低俗なヤカラを入れる訳には行かないなぁ」


「なんじゃとゴラァ!」


「拳さん、待って下さい……この方達は私が連れて来た客人だ」


「だからどうしたと言うんですか」


「もしこの方達に危害を加えるのであれば、それは私に牙を向けたという事になる」


「そ、それがなんだと言うんですか!? シーク様こそ、我々はダモクレス様直属の配下なのですよ?」


「……だからどうしたと言うのかな?」


「うっ……」


 シークの覚悟を秘めた鋭い眼光を見て、門番たちは金縛りにあったかのように体が硬直してしまった。


「こ、後悔しますよ……」


「……さぁ皆さん中へ」


「ヘヘッじゃあ邪魔するわい」


 拳は、固まっている門番に対して、挑発をするようにニコッと笑いながら入っていった。


「お兄様」


 中に入ると、真ん中にある螺旋階段から騎士の格好をし、長い黒髪を後ろに束ね、キリッとした目をした女性が立っていた。


「ミサ」


「帰ってらしたんですね」


「あぁ……ただいま」


「お兄様、この方達は?」


「あぁ……私達と一緒に兄さん……いや、ダモクレスと闘ってくれる同志の方々だ」


「えっ!? ど、どういう事ですか?」


「ミサ、私は決めた……ダモクレスからもう一度争いのない平和な世界を奪還すると」


「お、お兄様……本気なのですか!?」


「あぁ……本気だ」


「しかし、もうダモクレスお兄様を支持している者たちは、魔王国の二十パーセントとはいえ、皆好戦的な者ばかり、しかし、お兄様を指示している者たちはいくさとは無縁な穏健派ばかり、とても勝てる見込みがありません」


「……だから、彼らに協力を仰いだのだ」


 すると、ミサは拳たちの方をキッと睨みつけた。


「あなた達がお兄様をそそのかしたのですか」


「ヘッ、かもしれんな」


「グッ!」


 ミサは腰に身に付けていた剣を拳の喉元に突きつけた。


「ミサ!」


 しかし、拳と他三名はミサの行動に全く動じる様子を見せなかった。


「お嬢ちゃん……確かにワシが誘導した所はあるかもしれんが……最終的に決断したんはシークじゃぞ?」


「…………」


 シークはミサの手にそっと自分の手を置き、剣を降ろさせた。


「ミサ……私が決めたんだ、私が私の心と相談して」


「お兄様……」


「ダモクレスはどこにいるか知っているかい?」


「……最上階の死出の間に」


「……ありがとう」















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凶暴な戦後の高校生達が異世界に行き、勇者や魔王達に喧嘩を売りまくったら…… クマ田クマ尾 @Kuma3131

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