第30話 決意の盃事……
シーク率いる魔王国一行は、キーユに言われた通り、拳たちがいるという室内訓練所に向かった。
「すみませんが、ここに男虎拳さん達がいると聞いて来たのですが……」
シークは入り口の前に立っている男に話しかけた。
「なんじゃいオドレらは!」
「い、いや……私達は決して怪しいものでは」
「あぁん!? なんじゃ! なんじゃ!」「殴り込みかぁ!?」
入り口にいた男の声を聞き、生徒たちが訓練所の中からゾロゾロと出て来てしまい、ピリついた空気になってしまった。
「ち、違います! 我々は街中で会った、魔王国の一団です、今ここに来たのはあなた達と友好条約を結びにきたのです」
「なんじゃと? あ、あぁ〜あの時の……友好条約っちゅうと我々と一緒なって本丸と戦うっちゅう事ですかのぉ〜」
「そ、そういう事になります……」
「少々、お待ちください……男虎総番長!」
「なんじゃい!」
「昼に街中で会った、魔王国の方が我々と友好条約を結びたいと、お見えになっちょります」
「おぅ! ほいじゃあ中に入ってもらえや!」
「押忍! それでは中にお入り下さい、段差になっちょりますんで足元をお気をつけて下さい」
「あ、あぁ……どうもありがとうございます」
(なんて、切り替えが早いんだ……)
シーク達は中から出て来た男の一人に案内され訓練所の中に入っていった。
中には獄門高校と髑髏ヶ峰高校が綺麗に列を作り整列された状態で立っており、その前に拳と鬼嶋があぐらをかいて座っていた。
「どうぞ、こちらに足を崩してお座り下さい」
「あ、あぁ……どうも……あの〜何が始まるのでしょうか?」
「
「……盃事?」
すると、獄門高校の木戸が拳の隣に立ち盃事の司会を始めた。
「えぇ〜只今より獄門高校並びに髑髏ヶ峰高校による、簡単ではございますが盃事を行いたいと思います、私、本日進行役を務めさせていただきます、獄門高校三年、副番、木戸辰巳と申します、どうぞよろしくお願い致します、それでは、まず最初に獄門高校、髑髏ヶ峰高校の結束をより一層固める為、回し飲みを行いたいと思います」
すると、木戸が一升瓶を持って一番右端の前にいた生徒にグラスを渡し、そこに酒を並々と注いだ。
「頂戴します……ゴクッゴクッゴクッ……フゥ〜……ありがとうございました」
そして、飲み終えた生徒はそのグラスを自分の後ろにいた生徒に渡して、木戸から一升瓶を貰い後ろにいた生徒にその酒を先程同様、グラスに並々と注いだ。
「頂戴します……ゴクッゴクッゴクッ……ありがとうございます」
(ほぉ……これは、この人達の文化か……しかし、こんな大人数で同じグラスで回し飲みするのは、衛生面的にチョットなぁ……)
こうして、次々に酒が回って行った。
そして、最後の生徒が回し飲みを行ったところで拳が木戸に……。
「木戸、せっかくじゃ、魔王国の人らにも酒注いでやれや」
そういうと、木戸がシークの所に一升瓶と回し飲みに使ったグラスを持って行った。
「シークさん、よろしいですか?」
木戸はシークに一升瓶とグラスを渡そうとした。
「え、えぇ……」
「魔王国の大将! これはワシらの国の文化じゃ、やってくれるのぉ……」
「……」
木戸の手に持っている一升瓶とグラスをシークはジッと見つめ考えていた。
「なんじゃ? 出来ん言うんか?」
「あ、い、いや……勿論やらせてもらうよ……ハハッ」
「おぅそうか! 遠慮なくグイッといってくれや!」
(シーク様……本当にやるのですか?)
(仕方がない……ここで断って関係を悪くしたくないからな)
「やり方は大丈夫でしょうか?」
「あ、はい……先程から皆さんのやっている所を見ていたので……」
木戸がシークの持っているグラスに酒を注いだ。
「ち、頂戴します…………ゴクッゴクッゴクッ……プハァァァ……ありがとうございます」
こうして、嫌々? 魔王国一行にも回し飲みが行われていった。
「続きまして……獄門高校総番長、男虎拳並びに髑髏ヶ峰高校総番長、鬼嶋一男両名の兄弟盃を執り行いたいと思います……媒酌人は……私、木戸辰巳が務めさせていただきます」
木戸が拳と鬼嶋の前へ、一升瓶と新しいグラスを一つずつ置き、そのグラスに酒が注がれた。
「それでは両名、盃を持っていただき、一気に空けてください」
「「ゴクッ……ゴクッ……ゴク……」」
二人は同時にグラスの酒を一気に飲み干した。
「これを持ちまして、兄弟盃の儀を閉めさせていただきます、皆様、本日はご苦労さんでございました、最後に皆様、一丁締めで閉めさせいただきます、皆様、御手を拝借……」
『いよ〜〜〜〜〜〜』
──パチン
「ありがとうございました」
──パチパチパチパチパチパチ……
こうして、獄門高校と髑髏ヶ峰高校による盃事が終了し、そこにいた生徒は、散り散りに寮へとかえっていった。
「おぅ! これから両校の一年から三年までの幹部は寮の大広間まで来てくれや」
『押忍』
「終わったのか?」
「おぅ! 魔王国の大将! ここで大人しゅうしとるっちゅう事は腹決めたんか?」
「……そういう事だ……君に言われた通り、悩んで悩み抜いた末、最後は自分達の本心に従う事にしたよ……私たちも、やはり兄のやっている事は
「ヘッよっしゃ、色々な話しは大広間でやろう」
こうして、全員室内訓練所を後にし、寮の大広間にて幹部会議が開かれた。
「まず、魔王国の大将……」
「シークと呼んでくれ」
「シークよ……まずは何で今更、魔王国は戦争なんちゅう事をおっ始めようとしたんじゃ?」
「それなんだが……」
────
「なんじゃそりゃ? 遺書!?」
「シークさんよぉ……そりゃホンモンなんかい?」
「……本物もなにも、法務大臣が認めてしまったので私たちにはどうする事も……」
「認めたんも何も、その兄貴の部下が脅したんじゃろが、そんなもん嘘っぱちじゃあ!」
「い、いや偽物と断定は……」
「アホか! 色々と調べられたら面倒じゃから強硬手段に出たんじゃろうが!」
「そ、それは……」
「そんなもんが許されるんじゃったら、その法務大臣に、"やっぱり破棄します"って言わせりゃええじゃろうが」
「そ、そんな事をしたら法務大臣の命が!」
「それを、命張って守るんがアンタの役目だったん違うんか!」
会議に出席した、生徒たちから檄を浴びせられたシークは、顔を
「うっ……そ、その通りだ……口では、自分が何とかすると大口を叩いておきながら、実際に事が起きた時には……私は……」
「まぁでも、最終的には覚悟決めたんじゃろ? だからこうしてワシらんとこに来たんじゃろ?」
「拳さん……その通りです」
「じゃあ、今から行こう!」
「い、行こうというのはどちらに?」
「そのバカ兄貴んトコよ」
「え!?」
「そうじゃそうじゃ!」「それが一番手っ取り早い」「殴り込みじゃ!」「総番! そのバカ兄貴を殴るんはワシにやらせて下さい」「おい! 抜け駆けすんなや!」
(えぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!)
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