"大人"が"こども"に戻るとき

「忙しい人のためのレビュー練習企画【notテンプレな中編求む】」より来ました。

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 現1月。季節としては冬。そんな中私は、この夏の小説を読んだ。瞬間私は、擬似的な夏を体験することが出来たように思う。


 この作品は、今より遠い未来のこと。プロゲーマーである語り手、ガーネットZが、仲間たちと共にVRMMOで遊ぶのだ。
 ただし、【夏限定】の。


 この【夏限定】という一言に心惹かれた。人間は、刹那的なものに弱いと感じる。「今だけ〇割引き!」という言葉に買い物をしてしまう人がいるのも、人間の性というものだ。


 脱線したが、話を戻そう。主人公たちは他のゲームとの兼ね合いも考えつつ、この【夏限定】のVRMMOにて、様々な"夏の体験"をする。



 この"夏の体験"というものが、何とも色鮮やかに描かれている。海で遊び、カブトムシを捕まえることに奔走し、肝試しをし、花火、水鉄砲で撃ち合い……と、どれか1つでも、きっと経験をしたことがある人はいると思う。この作品は、そんな夏の思い出を髣髴とさせてくれる。

 もちろんVRMMOということで、ゲーム要素も多数存在する。長距離移動は転移システムでカット、リアルではいないモンスターが登場したり……。懐かしいようで、しっかり新しいものも取り入れている。そこの塩梅が見事だ。



 この作品を読んでからの全体の感想は、「大人はいつでもこどもに戻れる」ということだった。主人公の彼らは確かに成人している大人で、しかし、このゲームの中にいる間は、確かに"少年"と化している。積極的に冒険に赴き、仲間との絆を深め、時には無謀とも言えることにも大胆不敵にチャレンジしてしまう。こども特有の怖いもの知らずというか、そんなことを思わせる。

 大人になってしまったら、もうこどもの頃のような夏休みは生じない。だがこの小説は、いつでも私たちを"こども"に戻してくれる。
 ぜひこの小説を読んで、幼き刹那的だった"あの夏"に、戻ってみてはどうだろうか?