夏限定VRMMOへ

いちのさつき

第1話 夏限定VRMMOを知る

 黒髪を肩まで伸ばしている20代前半の細身の男、プロゲーマーとして活躍中のガーネットZは頭に装着している黒い物を取り外した。自室のベッドから起き上がって、背伸びをする。


「あー。疲れた」


 ガーネットZはただ眠っていたわけではない。仮想空間—VRの世界に潜り、銃やナイフを使って戦うゲームをしていた。今回は大会に参加をしていた。優勝候補がぞろりといたため、長い戦闘になった。そのため終わるまで数時間かかってしまった。そうなると脳に負荷がかかるため、疲れるのは想像が付く。


「彼奴からメールか」


 タブレット端末にメールを受信した報せがあった。チームメイトからだ。どういった内容なのだろうかと思いながら、トントンと慣れた様子で操作。


『限定ゲームを息抜きでやらね? URL貼っておいたからサイト見てみろよ』


 短かった。ガーネットZは返信をする前に、URLをタップする。すぐにサイトまで飛ぶ。緑をメインとしている。夏の象徴がちらほらとある。タイトル名は『君たちが作る夏の思い出の島』らしい。そしてキャッチコピーはこうだ。


『君たちも昔の夏休みを体験してみよう!』


 それを見たガーネットは突っ込みを入れる。


「普通に田舎に行けばいいじゃねえか。ああ。そうか。今は外出制限があるんだった」


 2X00年という現在、感染症は再び世界中に広まっているのだ。職業柄のこともあり、そこまで外に出ない彼はすっかり制限があったことを忘れていた。

 

 項目が色々とあるため、それらを見ていく。最初に世界観。ゲーマーとして気になる部分だ。ストーリーモードがある場合、大体は簡単なプロローグが書かれているのだが、このゲームには文字が1つもなかった。鮮やかな青空と緑の葉。写真でしか見たことのない古い家。セミ。絵だけで分かる。聞いたことのあるゲームと同じように、夏休みをテーマにしているようだ。


「あ。俺達のスポンサーも参加してるのか。今後のためにもやっとくべきだな。よし。返信しとこ」


 ガーネットZは素早く操作をし、仲間に返信を送った。プロゲーマーの彼らはこうして夏限定のVRMMOをやることになったのである。

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