第29話 俺の元カノがいつの間にか炎上していた件〜知らないうちに俺にも飛び火しててわりとヤバくはあるかもしれない〜

 が起こったのは中間テストが終わって全てから解放された後日、土曜日の朝のことだった。


 俺と雪の共通SNSアカウント、つまりジンメアチャンネルのSNSに大量のDMが届いたのだ。これまでも何件かアンチや雪のガチ恋やらなんやらからいろいろ届いていたがこんなにも多く届くのは初めてである。


「なんだぁ……?」


 俺は今にも落ちそうな眼をこすりながら、かつて青い鳥だったアプリを開いた。そしてそこに届いたメッセージを詳しく見ていく。


『白崎ナコミと関わらない方が良いですよ!男漁ってる痴女です!』

『白崎ナコミに付き合っている人いたって知ってましたか?』

『ナコたんの配信中の声ってジン君のじゃないですよね?だれのですか?』

『白崎ナコミと営業ってこと?』

『ジンメアも営業かよ』

『ファンやめます』

『営業死ね』


「なんだこれ……!」


 大量のDMの内容、それは全て白崎ナコミ、および白鳥奏に関するものであった。


 何でこんなことになってるんだ……?そもそも俺らのところに奏に関する質問が来るのがおかしいし……。それに彼氏って……。


 いったい何がどうなってるんだ……?


 ———ぷるるるるるる


 俺がメッセージの内容についていろいろ思考していると、持っていた携帯が震え始める。


『もしもし先輩!DM見ました⁉』

「あ、ああ。見たけど……。これはどういうことだ?」

『炎上ですよ!炎上!白鳥奏が炎上したんです!その飛び火が私たちのところにも来てるんですよ!』

「はぁ?炎上?……何で?」


 あいつは普段いい加減な性格をしているがそういうことにはとくに気を付けているはずだ。だから奏は配信を始めて1年ちょっと、デビュー直後のたった1度の炎上しかしてなかった。そんなあいつが炎上なんて……。


『彼氏バレらしいです』

「は?」

『何でも男の声が配信に入ったとか』

「おかしいだろ、あいつ一人暮らしだぞ?」

『そうです、だから炎上してるんですよ。どうやら配信で以前一人暮らしと言ったことがあるらしくて……』

「……だとしてもおかしいだろ」

『それは私もそう思いますよ』


 あいつが彼氏なんて作るはずがない。別に俺が好かれているからとかそんな理由じゃなくて、だ。それにもし作ったとしても配信中に家に入れるなんて迂闊なことなんて絶対しない。


『先輩、連絡してきてくださいよ』

「お前は連絡しないのか?」

『私はしたんですけど……、ボイスメッセージで”ばーか!”と返されまして……』


 あれ?なんか意外と元気そうじゃない?


「……まぁ分かった。とりあえず連絡してみるわ」

「はい、頼みます」


 雪のその返事を聞いて通話を終了させる。


 ……いつもあんだけ仲悪そうにしていながらもなんだかんだちゃんと心配しているらしいな。いや、そもそも本当に嫌いな相手だったらチャンバラすらもやらない、か。


 そんなことを考えながら俺は再度スマホを操作して早速奏に電話をする。


 雪への返信は自分の不安な気持ちを見せないためで、実はかなり傷付いているんじゃないか、とかわりとガチで心配しながら繋がるのを待っていたのだが、


『……もしもしオレオレ』

「それやるほう逆じゃね?」


 何ともしょうもない奏の様子に出鼻をくじかれてしまった。


『さっきオレ事故っちゃってリムジン壊したら、ちょうどその中に社長を人質とってた犯罪者ヤッちまって」

「お前そもそも運転できねぇだろ」

『違う違う、チャリンコだよチャリンコ』

「チャリンコでどうやってリムジン壊すんだよ‼︎」

『ほら、持ち上げてこう……、バンバンって』

「いや鈍器としてかよ!」

『……それで報酬として100万もらったから口座番号教えてくれない?』

「……うーん、詐欺の定理分かってる?」

『白い翼の?』

「サギだな」

『水の呼吸?』

なぎだな」

『炭酸抜きコーラ?』

「刃牙だな」

『闇に降りたった天才?』

「アカギだな」

『メディア王国 で宗教儀礼をつかさどっていた ペルシア 系祭司階級の呼称?』

「マギだな。……知識がマイナーすぎない?」

『沖縄県の揚げ菓子?』

「サーターアンダギーだな。もうほとんど関係ねぇじゃん!」

『でも美味しいよ?』

「全く理由になってねぇ……」


 ……俺も美味しいとは思うがな。


「まったく……。俺はそんなコントをするためにお前に電話かけたんじゃないんだて」

『え?違うの?』

「当たり前だろ。……それで炎上は大丈夫なのか?」

『ああ、その件ね。……まぁ私の方は大丈夫なんじゃない?』


 んな他人事みたいに……。


「配信中に男の声がのったとかこういう業界だとありふれた話だし」

「そういうことじゃなくてだな……」


 俺が聞きたかったのは今の奏の心理状況の方だったんだが、……これまでの会話的にそこまで気にしている様子はないし大丈夫そうだな。


『そもそもとして、どうして男の声なんて入ったんだ?』

『なんかスピーカーの音を拾っちゃったみたい』

「スピーカー?」

『そ。正確に言えばファンからもらった人形の中に入っていたスピーカーの音を』

「はあ⁉それって……⁉」

『うん、まぁその人形をくれた視聴者の意図的な犯行ってこと』


 マジかよ……。


『運営もそういうものが入ってないか確認はしてたみたいだけど、元々スピーカーが入ってる喋る人形だったし縫い目が綺麗だったから気づかなかったみたい』

「……なぁ、それって弁明できるのか?」

「……炎上なしでは無理だね」


 そうだよな……。視聴者からもらった人形にスピーカーが入っていて、それを悪意のある形で鳴らされました、と言うのは簡単だ。だけどそれは端から見れば視聴者に炎上の理由をなすりつけているようにも見える。まだ奏がグレーな状態ならまだしも、何も知らない人が見れば黒にしか見えないこの状況でそんなことをすれば更に炎上するだろう。


 もちろん奏の言葉を信じてくれるファンの人たちもいる。しかしその人たちがその理由を聞いた時その矛先が向くのがどこかと言えば、ちゃんと確認しなかったVファン運営だろう。


 つまり誰もかれもが下手に動けない状況にいるのだ。


 ……かといって、いつまでもだんまりだと肯定したと捉えられるので何か情報を出さないといけないのだが。


『どちらにせよ私は運営から連絡くるまでは動けないかな』

「それもそうだな、……まぁ元気そうで良かったよ」

『あれ?心配してくれたんだ~?』

「当たり前だろ、ビジネスパートナーだぞ」

『うーん、いや合ってはいるんだけどもっとこう肩書きあるじゃん!ほら————』

「じゃあ切るぞ」

『あっ、ちょっと待っ————』


 ”心配してくれたんだ~?”に雪と同じ気配を感じた俺は無理矢理に話を切って電話を終わらせた。


 危ない危ない。あいつらはなんだかんだ言い合ってはいるが、俺をからかう時の言葉はまるで同じなのだ。今終わらせなければ炎上より面倒臭いことになっていただろう。


「雪、電話し終わったぞ」

『早いですね、どうでした?』

「ああ、奏は—————」


 そうして俺は早速雪に連絡して奏の様子を伝えていく。


 ……しかしあまり気にしている様子が無かったのは本当に良かったな。まぁ、これで気にしていても奏らしくはないのだが……。


 電話の内容を全て報告し終わった俺はそんなことを思いながら再度ベッドに入り、夢の世界へ落ちていく。


 あぁ、起きたら全て片付いてたりしないかな……。


 俺のそんな願いは夢の中でさえ叶えられず、数時間後、現実的なアラームの音と共に再び目を覚ますのだった。


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 すいません、遅れました。期末テストが最近やっと終わり一段落着いてまた投稿再開できそうです。連絡できずすみませんでした。

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後輩とVtuberやったら何故かカップルチャンネルとして人気が出てしまった たつのおとしご @tatunoko_s

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