第28話 寝坊した朝〜コメダのサンドイッチの量はナメてはいけない〜

 バナナゲームをなんとか4時に終わらせて睡眠に入った翌日、いや当日、俺たちはもちろんのこと大寝坊をかましていた。


「先輩先輩!早くおきてください!もう8時10分ですよ!」

「は?マジ⁉︎てかお前もっと早く起こせよ!」

「私も今起きたんです!起こしただけ感謝してください!」

「あぁ……すまん。……ん?じゃあお前なんで俺のベッドに入ってんの?昨日下の布団で寝ただろ?」

「……知らないです」

「いやそんなわけないだろ。……お前もしかして俺が寝た後に潜り込んだりしてないよな?」

「……してないですよ?」

「何で目を逸らすんだよ」

「してないったらしてないんです‼︎そんなことより早く準備しますよ!」

「お、おう」


 雪の昨晩の話はもうちょっと気になったが流石に時間が足りないため一旦置いておく。


 ……まぁ、どうせ置いていったまま放置されるんだろうが。


「っと、早く準備しないといけないな」


 俺はさっさとベッドから出て一階へ向かう。なんかベッドの端の方から良い匂いするのは無視。


 台所まで向かい顔を洗って歯を磨くと、寝癖を直して制服に着替える。洗面台は雪に使わせるために使用は控えといた。その間約5分。


「よしっ。……おーい雪!俺は準備終わったぞー!」

「ちょっと待ってくださーい!すぐ終わりますから!」


 やはり男子と違って女子は朝の準備は多いらしいし。


 それからしばらくして雪は制服姿で2階から降りて来た。


 いつも見ている姿だからそんなに新鮮感は無いが相変わらずの可愛さである。もちろん時間が無かったのでメイクも無し。というか今までもメイクなんてしてなかっただろう。


「先輩どうです?可愛いですか?」

「おい時間ねーんだよ。そんなことに付き合っている暇は————」

「可愛いですか?」

「だから————」

「可愛いですか?」


 どうしても感想が聞きたいらしい。それは遅刻より大事なものなのか甚だ疑問ではあるが、言わないと学校へ向かえないだろう。


「……ヵゎぃぃょ」

「何ですか?声が小さいですよ?」


 ニヤニヤと俺の顔を覗き込む雪。


 くっ、こいつ時間がない時に調子に乗りやがって……!


「ああもう!可愛いよ!可愛い!お前はちょー可愛い!……これで良いだろ?さっさと行くぞ‼︎」

「あっちょっ、先輩引っ張らないでください‼︎」


 俺は赤くなった顔を見られないように雪に背を向けて手を引っ張って家を出る。そしてそのまま走って学校に向かう。


「もう先輩!そんなに走ったら髪が崩れるじゃないですか!」

「うるせぇ!走らないと間に合わないだろ!」

「そういえば朝食はどうするんですか?」

「お前今の状況分かってる?」

「もちろん。50mほど先に『みんなのコンビニ〜』がありますね」

「そういうことじゃねーよ‼︎」

「冗談ですよ冗談」

「あぁ、流石にそうだよな」

「そうですよ。『みんなのコンビニ〜』は100m先で50m先はコメダ珈琲店ですもんね。朝食ならそっちの方が良さそうですね」

「だからちげーって‼︎そもそも何m先に何があるとか覚えてねーわ!」

「ちなみにコメダ珈琲店は最近全国1000店舗を突破したそうです」

「お、それはすごいな」

「そして、最近では世界進出をして台湾、上海、香港を中心に40店舗、今年1月にはインドネシアにも1号店が出店しそうです」

「へー名古屋から世界へ、か。名古屋の誇りだな。———っじゃなくて‼︎」


 よくアレだけの雑学を知ってるな‼︎思わず聞き入っちゃったじゃねーか‼︎


「そんな無駄話もブレイクファーストもとってる暇ないんだって‼︎早くいくぞ‼︎」

「……先輩一旦時間見てみません?」

「はぁ?時間なんて今登校時刻ギリギリで……あれ?」


 俺はスマホの画面を見て首を傾げる。そこに書かれていたのは8時45分の数字。


「いつの間にこんなに時間が……?俺たちが家を出た時間は起きてから最大でも15分しか経っていなかったはず……」 

「あぁ、意外と長い時間話してましたね」

「いやお前のせいかよ!」

「先輩も楽しそうだったじゃないですか」

「いや、まぁそうだけど……」


 たしかに俺も話すのに夢中になっていたのもあったが……、だとして流石に無駄話が多かったかくね?雪が振ってきたから対応しただけだし。


「先輩先輩、もう寄っていきません?」


 雪はいたずらっ子のような笑顔を浮かべながらコメダの看板を指す。


「お前優等生だろ?大丈夫なのか?無断で遅れて」

「もう朝起きた時に連絡しときました。私達二人分」

「……お前じゃあ何であんな様子で俺を起こしたんだよ」

「いやー、先輩が焦るかなーって思いまして」

「性格終わってない?」


 何だこいつ。俺を困らせることに人生懸けてんのか?迷惑すぎない?


「……でもそれ明らかにサボりってバレてないか?お前が俺の分まで一緒に連絡したんだし」

「大丈夫です、私先生に気に入られていますし、テストの点も良いですから」

「……さいですか」


 前言撤回、こいつ優等生でも何でもないわ。


 ……まぁでも、もうここまで遅れちゃったんだったらここで食べてくか。どうせ1限目に合わないし。


「それじゃあ行きましょうか」


 そうして俺は雪に手を引かれるがまま店内に入っていった。


 後にこの朝食の感想を言うとすれば、店員からの視線が痛かったのと、やはりコメダのサンドウォッチ二個は小食の、ましてや朝の俺には多過ぎた、ということだった。



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 みなさん、高校で遅刻は控えましょう。物語の中ではかなり遅刻していますが、遅刻しすぎると最悪留年する可能性もあります。まぁ、学校によって違うと思いますが。


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