事故物件を通して、そこにまつわる怪異に飲み込まれていく物語。 王道、とはまさしくこれではないでしょうか。事情通の専門家、うかつな被害者、そして人の身ではおよそ抗う術の無い恐ろしく強大な怪異。主にこの三者によって構成された内容は、イチ読み手としても、書き手の端くれとしても、実に分かりやすいシンプルさで、ゆえに最も強く恐怖を演出してくれます。 完成度が高すぎて閲覧注意、かもですね。面白いことは間違いありませんので、自己責任でお手に取ってください。
サクサク進んでいくので、ストレスなく読めて良かったです。必要な情報や描写をポンポンと出してくれるので、話が追いやすい。ホラーの根幹に「母と娘の愛憎(確執)」を持って来ているのがツボでした。たとえ心霊現象が関わっていなくても、何らかの事件に発展する条件として取っ掛かりやすかったです。今後の作品も期待してます。
ホラーは怖いだけではない。恨み辛みに至るまでの哀しみが、必ずある。だからこそ、恐怖が倍増するのだろう。この作品の哀しみは、深い。終わることのない哀しみは恨みを増幅させる。
事故物件と呼ばれるものが現実にも存在している。科学では説明のつかないことも世の中にはある。この作品において発生している事象というのは、ある一人の女性の霊によるものと説明されている。その場所は現代の姥捨山。娘を持つ母親だけが死んでいく。すべてを明かさないからこそ、ぞわりとした恐怖心も残る。順調にすべてが開示されていたようでいて、実は読者には明かされていないものがある。その恨みは誰のものか。誰が誰を恨んで呪ったものなのか。このぞくりとした読了後の感覚を味わって欲しい。ぜひご一読ください。
不動産業界の退廃的な空気と、陰鬱としたストーリー展開が怖さを引き立てています。新人女子社員、森脇の常識的で几帳面な性格と、森脇の先輩社員にあたる、宮下の粗暴で品のない性格の対比が、物語にいい味を出しています。