第16話 ざっくりまとめて一区切り!〈ストーリー創作準備まとめ〉

 みなさま進捗どうですか?

 私は芳しくありません。


 というわけでみなさまお疲れ様です。電気石八生と申します。

 やっとプロットが仕上がった区切りとして、今回はここまでの作業をざっくり振り返る回をやらせていただきますよ。

 創作術という、私がこれまで触れてこなかったシステムを用いての紆余曲折。それはもうアレでしたが、ともあれです。

 最初の思惑がなにをどう経て最終形となったのかを考えていきましょう。整理を含むので繰り言も多々ありますが、そこはひとつ大目に見てやってくださいね。



『江戸ホスト』というネタはこの企画用に考えていたものではないのですが、岡田くんにぽろっと話したところ、なんだか企画と噛み合いそうだなとなって、それでやってみることになった経緯があります。

 この時点で存在していたものは、「ネタ」、「主要キャラ」、「“大祭”というラスト」だけでした。


 さて、いざ形にしてみようとなれば、ストーリーラインの柱となる「物語テーマ」が必要となりますね。

 ネタをこねる中で鷹羽切腹と火事(鷹羽とおはなさんの出逢い)のくだりは決めていたので、それを元に大祭へ至るには――死にたがりの主人公がハレの極みである祭へ臨むには――祭を楽しめなければいけません。つまり、死にたがってはいられない。だったら生きたがりにならないと!


〈思考の流れ〉

1.ラストシーンの大祭で鷹羽が生きると言い切る。

2.そのために死にたがっていた原因を踏み越えないと。

3.原因の若君は死んでるから使えない。

4.代わりに鷹羽の切腹を阻止して生きろと命じた殿様に出張ってもらおう。

5.みんなで幸せになる!


 こんな感じでラストをざっくり決めて、今度はそこに連なる流れを作っていくことにしました。

 ラストを先に決めてしまうのは善し悪しあるかと思いますが、メインのストーリーラインをそこへ向けてまっすぐ引けるのは大きなメリットかと思います。実際、見せ場且つ最後の大祭への伏線として、一幕ラストの土俵入り(最初はラストじゃありませんでしたが)、二幕ラストの吉原のシーンは迷わず決められました。

 まあ、その後に投稿サイトでの連載形式を考えたことで別の問題に突き当たるわけですが……


 別の問題とはすなわち、創作術で云うところの「プロットの波」ですね。

 このときの私は以下のことを考えてプロット作りにかかったのです。


1.(連載形式の)各話でひとつ見せ場を作る。

2.ホストクラブが形作られていくエピソードを入れる。

3.祭を盛り上げる。


 そのせいで編集者の岡田くんから「詰まりすぎ」だと怒られるわけですが、それによって私は気づきましたよ。


『各話の引きが重要な連載作品と、一作としての完成度が重要な新人賞応募作では、そもそも構造が違う』


 言ってみれば当たり前のことではあるのですが、評価が欲しい書き手側は意外と一緒くたに考えてしまいがちなのですよね。投稿サイトという文化に慣れ親しむとなおさらにです。

 そうして自分のズレを認識した後、あらためて“一作”を作りにかかりました。具体的に言えばエピソードの肉抜きですね。ああ、苦闘ぶりにつきましてはどうぞ以前の話を見てやってください。


 で、抜くとなればなにを抜くかですが。

【エピソードを減らす=シークエンス内のシーンを減らす】となりますから、まずはシーンの構成要素である登場人物を減らすことから始めました。最初のプロットにいた内勤さんが消えた理由です。

 同時に無駄な“波”を減らすため、岡田くんと会議をして構造の見直しもしました。中でも御郎を最初のシーンから登場させたこと、菖蒲参入を二幕に送り出し、鷹羽土俵入りを一幕クライマックスへずらしたのは大きかったですね。これらのおかげで一幕ラストが男・鷹羽の見せ所である土俵入りで締められましたから。


 これらの作業をしていて気づいたのですが、シーンを減らすためにはそれが詰められたシークエンスを見る必要があり、ビートを減らすためにはそれが構築するシーンを見る必要があるということです。

 一箇所のバランスを調整するには他の箇所が集合して織り成される、もうひとつ上のくくりを見るべきということですね。ただ、これについては逆……大きいくくりを調整するためにはひとつ下のくくりを見るべき、というやり方もあるかと思います。

 ともあれ一幕がしっかり決まったことで、二幕と三幕もどう形を変えるべきかの必然性が見えたかと思います。


 ラストを決められれば、それに繋がる物語的な要所は決まる。

 ただ、要所を繋ぐシークエンス・シーン・ビートまでは決まらない。

 だからこそ各部の見直しと調整を十二分に行う必要がある。

 特にプロット段階でのシークエンス設計はその後に大きく影響する。


 これもまた当たり前ではあるのですが、実感するためにいくつもの失敗を経る必要がありました。

 そして失敗を経てみて思うのは、創作術はあくまで「ピンポイントな助力」であるということですね。作業全体に効力を及ぼすものでなく、「このひとつの作業をするやりかたを説いたもの」という感じで。

 創作術の書が大概太ましいのは、ひとつでも多くの問題を取り上げ、対処できる“点”を増やそうという著者さんの心意気なのではないかと、そう思うのです。



 さてさて、創作術を用いてのプロット作りで感じたことをざくざく振り返ってみましたが、いかがでしたでしょうか?

 次回からはいよいよ執筆……の予定なのですが、こちらの開始は岡田くんが鋭意執筆中の『創作術の本を100冊読んで、極意を1冊にまとめてみた』が無事出版された後となります。

 執筆時にはもちろんそれを元にしていきますので、しばしお待ちくださいませ。

 それでは何卒、よろしくお願いいたしますー。

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