鎌鼬をこの手で愛で続ける話
目の前で三匹の
にへ〜と、それを眺めているとピンポ——ン……と、インターホンが鳴った。家族が来る訳ないし、配達や出前が生活基本だけど、まだ何も注文していない。
「はーい、何の用でしょう?」
「ヒッヒッヒ、あんたの様子を見にきたよぉ」
この老婆は、自称『安達ヶ原の鬼婆』で妖怪の
「イッヒヒ……あんたも物好きだねぇ。何回も指が落とされちゃあ、誰だって気が狂うものだよぉ」
「指が取れても病院に行けば治して貰えるんで、何も問題無いんです。何より、ターちゃんのおかげで痛みが全く無いんですから」
「ヒヒ……三位一体、
「なんですかそれは?」
「ケヒヒ……、まあ狂っているのはアタシも同じだがねえ——だが、こんな生活続けたらいつか四肢がバラバラになっちまうよぉ。それでも、この子達のお世話をするつもりかぁい?」
「……当然です。私がいなかったら、この子達はまた身を潜めて生きていく。妖怪だろうが未確認生物だろうが関係ない、私は絶対に
可愛らしい栗毛のイタチの姿に、鋭利な両腕の鎌。ハリネズミの様な愛くるしさを、私は
「イヒヒヒッ……そうかいそうかい。今や人々は過去の怪異に縋り付き、昭和から新しい妖怪は産まれやしない……コレが何故か、あんた分かるかい?」
「……はあ。超常現象を科学的根拠に当て嵌めてしまって、人が妖怪の存在を平面世界に閉じ込めてしまっている——という話は、聞いた事があります」
「イッヒッヒ……異様な想像体験は、時に本物の怪異を創造するものさぁ」
「「「ブシャ……ッ」」」
「イヒヒ……こうしてあんたらが、存在できてるのも飼い主さんのおかげという奴さぁ」
「だいじょーぶ、なあんにも怖い事されないよ」
「ブッ……シャアアァアァ!」
大丈夫、大丈夫と私はチーちゃんを撫でる。
「よーし、よーし……チーちゃん、落ち着いた?」
「ブシャアァ……!」
チーちゃんが声を上げて飛び跳ねた瞬間、空気が渦巻いて、私の腕や指が何箇所もパックリ裂けた。鋭利な風を全て受けたせいか、
「ヒェッヘッヘ……痛そうだねぇ、皮膚の奥深くまでキレイに裂けちまってるよぉ」
「でも全然痛くないんです。血だってすぐ止まりますから」
そう何も問題無い。だって痛くないし、チーちゃんの仕業なら笑って許せるし。指を何回切り落とされても、肌を何回切り付けられても、三匹をモフれる限り私はこの手で、
「ヒヒ……あんたは、令和の新しい
鎌鼬-かまいたち-をモフモフする為に、三匹飼い始めた話。 篤永ぎゃ丸 @TKNG_GMR
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