鎌鼬の餌やりと鎌研ぎは可愛い話

「ピーちゃん、ターちゃん、ご飯の時間だよぉ〜」


 別ケージに入っている鎌鼬かまいたち達のご飯タイムだ。生態はイタチと変わらないので、基本雑食だけどネズミや鳥等の動物肉が大好物。こうして与えた餌を両手の鎌で、ステーキのようにサクサク肉をカットして、がっつく姿は殺人的な可愛さだ。


「フッハアァアァ……超かわいぃ……」


 はむはむと肉を食いちぎる鎌鼬かまいたちに、顔面が緩む。この野生的な食べっぷりは、専用の餌があるフェレットじゃ無理だろう。


「ブシャァアァアァ!」

「ブッシャァァアァ!」


 そう、そう! この鳴き声もいい! 牙と鎌を鋭利に覗かせて、威嚇するように鳴く姿! 耳が癒されるぅ〜! 目の保養になるぅ〜! あー……こんなに、可愛らしい妖怪を私が独り占めしていいんだろうか。


「よーし、食後のブラッシングいくよ!」


 可愛いのは、食べる姿だけでは無い。ポケットから手頃な研石を出すと、お腹いっぱいの鎌鼬かまいたち達がジャキンジャキン鎌を打ち鳴らしながら私に寄ってきて、ゴロンと床に転がってお腹を出してきた。この合図と共に、近くのテーブルからグレーの軍手を取って両手に装着した。


 本当は素手で、鎌をジャコジャコやってあげたいけど、HPPE材質軍手のゴワゴワ感で撫でられるのが好きらしい。こうやってちょっと強めに鎌を押さえつけて、水に浸しておいた研石で手元の鎌を研いであげると——。


「きゅーッ きゅきゅッ」


 すっごい気持ち良さそうに、きゅうきゅう声を上げるのだ。鳴き声は野生イタチとほぼ変わらないけど、可愛いったらありゃしない。妖怪って事忘れそうになる。


 今研いであげてるピーちゃんは、刃の根本の部分をこうして縦向きにジャコジャコしてあげると、一番喜ぶ。ご満悦頂いた所で、次はターちゃん。この子は鎌裏の返し部分を横向きにジャコジャコしてあげると、声を上げずに気持ち良さそうにするのだ。



「きゅううぅう……」

「きゅッ きゅッ」


 ピーちゃんとターちゃんは、満足そうに床に転げ回る。動いた反動で、時々鎌の先がザクッと床に突き刺さるのがまた、微笑ましい。この二匹は三位一体の中でも比較的大人しい方で、多分今までの役割的にそうなんだろう。


 鎌鼬かまいたちは昔から、人の皮膚に傷を作る妖怪だ。なかなか怖い事をするのだが、それでも気付かれないのは、出血しないように上手く三匹で連携してきたからだ。


 実際私の指を何本も切り落としてきたチーちゃんは、加減が上手く出来ない。一匹だけにしたら、動くだけで発生するかまいたちと両手の鎌で、何でもかんでも切り刻んでしまう。


 ピーちゃんが人の気を逸らしたり、大怪我にならないよう気を利かせて、ターちゃんが痛む前に傷に軟膏効果のあるヨダレを塗布する。ツッコミ所は満載だが、そういうバレないように必死な所も含めて、鎌鼬かまいたちは本当に可愛らしい。

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