ロッカー内に男女二人入ればそりゃまあ……3

「せ――セックスを今ここでしてだとッ⁉ む、無理に決まってるだろそんなのッ!」


「いやいや、ソックスを今ここで脱がせてって言ったんだよ! ま、私はセックスでも全然いいけど! むしろそっちの方が良いかな! 確実に皆にバレるだろうけど」


 ニシシと揶揄うように笑う牧瀬だったが、俺は内心ホッとしていた。


 せ、セックスじゃなくて、ソックスの方だったか……と。


 いや、聞き間違えた俺が悪いんだけども。それは置いておくとして。


 きっと牧瀬はパンティーを下ろす事をいとわないだろう。故に口から勢いだけで出たハッタリなんかじゃない。


 俺が彼女のソックスを脱がさなければ、彼女は自らの手でパンティーを下ろす。それを阻止するにはやはり……、



「すぅ……わかった。脱がしてやるから、じっとしていてくれ」


「はぁい」



 彼女の生足を拝む他ないようだ。



「……………………」


「ん? どうしたの? 理生君」 



 脱がせやすいようにと片足を上げてくれた牧瀬だったが、事はそう簡単にいかないようで。


 ど――どうやって脱がせればいいんだこれッ?


 俺は難問という壁にぶち当たってしまう。


 現在の俺と彼女の位置関係はキスする前の男女、至近距離で向き合っている状態だ。隙間という隙間はほとんどない。


 でだ、この状態で俺はどうしゃがめばいい?


 牧瀬の体に触れないようジェントルメンに徹すれば、確実に尻や肘がどこかしらにあたって万事休すとなってしまう。


 なら、彼女に接触するのを前提でしゃがめば…………いいやダメだ。彼女が物音を立ててしまう可能性が上がってしまう。リスクしかない。


 となれば立ったまま彼女のソックスを脱がせるしかない。


 しかしながら彼女の膝頭はちょうど俺の鳩尾みぞおちの辺り。


 伸縮する腕を持っていない俺がこの状態で牧瀬の生足を晒させるには、腰を屈める必要が出てくる。


 となると前述したリスクが出てくる為……できない。



「み、理生君……ちょっと足上げてるの辛くなってきたんだけど、早く脱がせてくれない? それともこれ、焦らしプレイ?」


「そういうのじゃない」


「じゃ、じゃあ……どういうプレイ?」


「いや、プレイじゃないから」


「そ、そうなんだ」



 牧瀬のもう片方の足がプルプルと震えている。一本足で支えていればそうなるか。



「取り敢えず、俺の肩に手を置いてバランスを保ってくれ」


「うん」



 限界が近かったのだろうか牧瀬は俺の指示に素直に従い、一息つく。



「ねえ、理生君」


「ん、何だ?」



 目と鼻の先にある牧瀬の顔がムスッと膨れる。



「脱がす気ないなら私、自分で脱ぐけど」


「……ソックスをか?」


「違う。パンツの方」


「勘弁してくれ」


「じゃあ、は・や・く・し・て」


「んはうッ」



 急かすように膝頭を俺の陰部に当ててくる牧瀬。雑な扱われ方なのに気持ち良いのが非常に悔しい。


 クソッ、どうしたら物音を立てずに牧瀬のソックスを脱がせられるってんだよ! 無理だろこれ!


 右、左、右、左、ときたま上下と、牧瀬の膝が俺の飢えた獣を刺激してくる影響で、思考がかき乱される。


 もう……パンティーを下ろすのでいいんじゃないか。


 だってそうだろ? 牧瀬が下半身を晒したところでそれまで。俺が行動を起こさなければいいだけの話。


 そうだ ! 俺が間違いを起こさなければ――――ハッ⁉



「……そうか。腕を下に伸ばすんじゃなく極力前にのばせばいいのか」



 雷に打たれたような閃きが俺の脳裏に訪れた。


 位置関係の問題だったんだ。彼女の足が近すぎるからダメ……もう少し離れた位置にあれば。



「――牧瀬、悪いが〝あっち〟に顔向けてくれないか?」


「あっちって?」


「俺に背を向けてくれ!」

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エッチまでが簡単な世界でエッチを拒み続けていたら…… 深谷花びら大回転 @takato1017

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