ロッカー内に男女二人入ればそりゃまあ……2

 狭い、暑い、そして何よりエロい。この三拍子が揃ったロッカー内で女子と一緒にいればそりゃムラムラだってしてしまう。言い換えればエッチな事したくなってしまう。


 辛うじて正気でいられるのは元の世界の筏井いかだい家の生活がちゃんと頭にあるからだ。それがなかったら俺はもう……とっくに獣になっている。


 だが、俺のアソコは……せいと書いて正気しょうきと読む方じゃなく、せいで性器の方が飢えた獣になってしまっている。


 我が股間に宿りし飢えた獣は、さきほどからずっとよだれを垂らしまくり、ガルルルルとうなっている。


 獲物が見つからないんじゃない。獲物を目の前にしておきながら食せないもどかしさに鋭利な歯を剥き出しているんだ。


 食わせろ……食わせろ……食わせろ……と。


 ああ……哀れなり。泡泡したいな哀れなり。獣は未だ自分が捕食者の立場にいると思い込んでいるようだ……が、残念ながら違う。


 真の捕食者は獲物と信じて止まない方なのだ。


 つまり、獲物は飢えた獣=俺……いつだって食べられてしまうのはオスの方だ。


 いや、そうでなくて。



『――――――――――――』



 ようやく1時限目が始まったか。これから50分、ここで息を殺して待つのは過酷だが……我慢できなくもないと思う。



 問題は……、



「あっつ~い……汗が止まらないよ~」



 恥ずかし気もなく〝下着姿〟になったこいつだ。


 体が火照ってきたとか何とか言ってたが、まさか本気で脱ぐとは思いもしてなかった。



「はぁ……あつあつ~」



 目のやり場に非常に困る。牧瀬の汗を纏った肌が俺の体に触れてくる度に飢えた獣が反応してしまう…………もう、こっちまで汗びしょびしょだ。張り付いたシャツが気持ち悪くて仕方がない。



「あーもう……〝下〟もあっつい! すんごくあっつい!」


「ちょ、頼むから静かにしててくれ!」


「え~、でもあっついんだも~ん。下がぁ……ものすご~く、あついんだもん」


「下って……」



 俺は横目で牧瀬の下半身を盗み見る。スカートは既に地に落ちていて、下着が最終防衛ラインを担っている。


 こいつ、まさかパンティーも脱ぐ気じゃ――――。



「どこ見てるの? 理生くぅん」


「べ――別にッ、何も」


「うっそ~、じろじろ見てたって~。あ、もしかしてぇ……私がこれを脱ぐの、期待してたり?」



 牧瀬は小悪魔のような笑みを浮かべ、布面積の少ないパンティーの両サイドに手をかけようとする。



「ちょちょちょ、それはさすがにダメ! アウト!」


「え~、ここまでその気にさせておいてそれは酷いよぉ……理生君の意地悪ぅ」


「そっちが勝手にテンション上がってるだけだろ! なあ牧瀬、頼むから喋らせないでくれ! マジでバレるから」


「……静かにしててほしい?」



 ぶんぶんと俺が首を縦に振って見せると、牧瀬は人差し指を顎に当て「う~ん」と考えだした。


 一体何を考えているのか……こっちとしては気が気じゃない。だって、間違いなくよからぬ事を頭に浮かべている顔しているから。


 その嫌な予想は当たっていたようで、何かを思い付いた様子の牧瀬は俺の瞳を見つめながら色っぽく舌なめずりをして見せてきた。



「そ、れ、じゃ、あ――――私が履いてる〝ソックス〟を今ここで脱がせて! そうしたら理生君の言う事きいてあげる!」

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