相合傘

ツヨシ

第1話

その日夜、雨の中歩いていた。

すると前から女が歩いてくるのが街灯に照らされて見えた。

傘をさしている。

別に珍しい光景ではないはずなのだが、俺は違和感を覚えた。

普通傘の柄は、自分の体の中心近くに持つ。

しかし女は右手で右端に持っていた。

傘を半分しか使っていないのだ。

まるで隣に誰かがいるかのように。

一人相合傘だ。

俺が見ていると、今度は女が右方向に話しかけ始めた。

とても嬉しそうに笑いながら。

もちろんそこには誰もいないのだが。

そして女と俺はすれちがった。

やはり右に誰かいるかのように話しかけていた。

すれちがった時、俺は女をどこかで見た様な気がした。

そして家に帰ってから思い出した。

一か月ほど前にニュースになっていた。

男が殺された。

そして女は、その男の婚約者だったのだ。

そうすると女は、いったい誰と話をしていたのだろうか。


       終

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相合傘 ツヨシ @kunkunkonkon

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