第7話 (僕+私)の何気ない旅行

「みーやーびっ」


「ん?」


雅はホテルのベッドで考え事をしてたところ京に呼びかけられて意識をそっちに向ける。


「全く...浮かない顔して...結果的に何も無かったんだから気にする必要はないって言ったじゃん?」


「いや、僕が京を助けることよりも犯人を捕まえてやることにばかり目が行ってしまったからさ。京があんなに辛い目に...」


「いいの!結果私は何もされてないんだから!まあ触られはしたけど雅が私を守ってくれた。その事実だけで良いの。」


京は優しい。この優しさに本当は甘えすぎてはいけない。けど、その優しさが今の僕にはとても必要だと思った。


素直に京を自分の腕で優しく囲う。京もそれを受け入れ優しく抱きしめてくれる。


「ありがと、京...」

「うんうん。それでいいんだよ。雅。」


僕には自分を大切に思ってくれる人がいる。


今はこれを再確認出来ただけで心が軽くなった気がしたのであった。


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『あ〜~~~~生き返る〜。』


広々とした温泉にたった二人の生徒。そして無言の空間。男湯の隣からは女子生徒たちの恋バナが聞こえてくる。『〇〇〜!あんた△△のこと好きなんでしょ?』『え〜!?それを言うなら‪✕‬‪✕‬も□□の事が好きなんでしょ〜!?』『えっ!?ちょっ!?私に振らないでよ〜!』


お嬢さんたち、聞こえておりますよ。


クラスメイトの恋愛事情を特に何もしてないのに知っちゃったあとってその二人の関係が気になって気になってしょうがなくないよね。


そんな女子たちの愉快な会話に耳を傾けてしまう自分に失笑気味に軽くフッと吹いてしまうと、今までの男湯の沈黙を断つように奏多が僕に話しかけてくる。


「雅、気は楽になったかい?」


「京のおかげでな。」


「そうかいそうかい。そりゃ結構!」


奏多はそう言うと温泉の湯舟から上がり「あまり出雲さんを心配させるんじゃないよ。」とだけ言って風呂場を後にした。


そうだよね。京に心配をかけてはいけない。あんな可愛い京に心配をかけるなんてなんて罪なヤツなんだ。


僕は慰めてくれた時の京を思い出す。


「あ〜~~~...京...好き。」


一人しかいない男湯にその一言が響いたのであった。


「奏多も本当にいいやつだ。」


特に話してはいなかったのだが最後の最後で声をかけてくれたのは奏多の優しさなのだと思う。今思えば良い友人そして良い恋人に恵まれたものだ。


今の自分は相当な幸せ者だろう。


そこで視界が少し揺れた。


『あ〜、そろそろ上がらないとな。逆上せる前兆だ。』


僕はすぐに湯船から上がってバスタオルで体を拭き、高校のジャージを腕に通すのであった。


ちなみに雅が風呂場を後にした直後、「あ〜~~~...京...好き。」という言葉が聞こえた女子グループは、雅が出ていったのを確認した直後に、女湯に一緒にいた京を質問攻めにしたのは言うまでもないことであった。そして京が顔を真っ赤にするのもまた言うまでもないことなのであった。


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更新が大幅に遅れて申し訳ありません。


読んでくださりありがとうございます。


もしこの作品を気に入ってくださったら次話でも是非よろしくお願いします。

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僕が高嶺の花と思っていた女の子は僕の事を高嶺の花と思っていたようです。 出水 詞 @Kotoha_izumi

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