エピローグ:いつかの彼方から愛を叫んだ科学者
それから数年以上の時が経つ。
結論から言えば、俺は【アカデミア】をクビになった。
逆に機関を利用する方法もあったかもしれない。
しかしこの件に関する研究は、あくまで
〝世界中の人々の役に立つ〟というアカデミアの理念に真っ向から反する行為を、公費ももらっている機関で行うわけにはいかない。
以来、俺はたった独りで【たぶれっと】の研究を続けてきた。
「あれから、俺も日記をつけ始めたんだ。こういうのは3日坊主なんだが……意外にも今日まで続いたよ」
白衣姿の俺は【たぶれっと】を機械に接続した。
そして自分なりに打ち立てた【譁ー騾イ驥丞ュ仙ュヲ】システムのレバーを下げる。
――【たぶれっと】は充電が開始され始めた。
「でも……日記帳は今日で最後にしよう。いずれにせよ、書いてある内容は毎日ほとんど変わらないんだ。研究がどこまで進んだかと――キミへの想いだ」
ぽおおおおん。どこか懐かしい甲高い音が響いた。
充電は完了した。俺は満を持して【たぶれっと】の電源を――入れる。
刹那。
いつかと同じ――真っ白な光が周囲を包んだ。
身体がその中に吸い込まれていく。俺はすすんでその銀幕の中へと飛び込んでいく。
やがて光が晴れた先には。
「――!」
いつもと同じ甘ったるいオノマトペを発する――俺の【恋愛相手】が立っていた。
彼女はぽかんと口を開けたあと、信じられないように目をこすって。見つめて。やっぱり泣いて笑って。
「……っ」
俺の胸へと勢いよく飛び込んできた。
熱い抱擁が終わってから。名残を惜しむように身体を離して。
彼女は言った。
「おかえりなさいですう、
それからふたりは自然と顔を近づけて。
――お互いにとって大切なところを、くっつけた。
どくん。どくん。どくん。どくん。
恋愛の音は――いつまでも鳴りやまない。
* * *
お読み頂き有難うございました!
フォローや♡、星★評価などもぜひ――
ゆるふわ宇宙人は『恋愛』の夢を見るか? ~おうちデートの相手が糖度マシマシだったのだが~ ささき彼女!@受賞&コミカライズ決定✨ @tamaki_ta
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます