第9話 可愛い女の子がいない。

「お、おはよう。どうしたの?」


びっくりした。

話すのは多分、一週間ぶり位だ。


「あぁ、‥‥書類を忘れてしまってな。」


「じゃ、じゃあ、俺は行くから。」


そう言って、そそくさとこの場を逃げようとする俺を父さんは

「少し、話さないかい?」

そう尋ねる。


俺は、普段余裕を持って登校しているし、家から学校まで10分だ。

だから、時間的には何も問題はない。

だが、正直、話しずらい。


休日、何してるの?

とか聞けるわけないし。


‥‥何を話せば良いんだよ。


「ごめん、学校あるから。」


「‥‥そうか、気をつけてな。」


なんで、寂しそうなんだよ‥‥。


そうして、俺は家を出た。


「母さんもなんで‥‥。」


俺の両親はかなり仲が良かった。

例えば、


「あなたー、はい、これ!」


「なんだ?」


そう言って、手渡したのは愛妻弁当だ。


「いつも、ありがとう。恵〜。」


そして、父さんもお礼と言わんばかりのハグをする。


「もぉう、あなたったら、順平もいるんですよー!」


「良いじゃないか、見せつければ。」


「あははは、そうですね!」


おい。


「あっ!順平の弁当も。」


それから、俺に弁当を手渡して、嬉しそうに俺の頭を撫でる母さん。




そんなことが日常茶飯事だった。

母さんと父さんはお互い愛し合っていたが、

それくらい、俺のことも愛していた。


「母さんの浮気が嘘みたいだ‥‥。」


そうして、歩いていると学校の校門に着いた。

そして、そこには、


「お〜い!順平せんぱ〜い!」


そう言って、大きく手を振る結衣。

これから、楽しくなることが一目で分かる。





俺が校門に着いた頃のこと。


「あぁ、あった、あった『写真』が。

最近は書類もほとんどなくなって、便利だな。‥‥嘘は難しい。」


‥‥君はやっぱり、ズルいよ。

いや、そんなことを言える立場ではないな‥。

愛している、たまらなく。

あの愛情表現が出来ないけれども‥‥。


そこには、逃げる男がいた。






次は、結衣家の視点を投稿します。

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