お稲荷さまのお守りさま

斉藤すず(斉藤錫)

お稲荷様のお守りさま

◯主な登場人物

宮守みやもり名雪なゆき

 16歳の高校2年生。男性。優男で線が細く、名前のこともあって女性に間違えられることもある。過去にとある経緯から片目を失っており、そちら側には眼帯をしている。

 幼い頃から幽霊や妖怪といった霊的な存在、総称して「御霊みたま」と呼ばれるもの達を見ることができたが、そのせいで周囲の人々から浮いてしまったため、御霊全般を嫌っている。

 孤立と孤独とを深めていき自死さえ考えるようになっていく中、とある経緯でまだ幼いお稲荷様である「稲穂」の面倒を任されることになり、運命が大きく回り始める。

 霊能力者としては「見たり聞いたり」といった認識能力である「識」に極めて優れている一方、霊的攻撃力である「破」、霊的防御力である「守」に関しては非能力者と同程度かむしろ低いくらい、という極端な能力構成をしている。また、人間を含む各存在が保有している霊力の貯蔵庫である器(高杯)が異常なほどに大きく、一方でその器にほとんど霊力が入っていないというこれまた歪な特徴を持っているが、この特徴ゆえ、外部から膨大な霊力を受け取ることが可能となっている。土地神である稲穂から大量の霊力を供給されると一時的に「おりモード」へと変身し、強大な霊能力者や悪霊に引けをとらないほどの力を発揮できるようになる。


いちじく稲穂いなほ

 2歳にならないくらいのまだ幼いお稲荷様。全体的な見た目は同年齢の人間の女の子のそれだが、金髪に赤目で頭には狐の耳があり、腰からは身の丈ほどもある大きなモフモフの尻尾が生えている。大変愛らしい顔貌をしており、親代わりの名雪や夏希からは「可愛すぎて直視できない」、「目に入れて痛くないどころか視力が回復する」などと言われて溺愛されている。

 極めて無口で表情の変化に乏しく、何を考えているのか分かりにくい。おとなしいので世話をしやすい一方、怪我や体調不良といった大きな問題が発生していても周囲の人間が把握しにくく、子育て難易度はむしろ高い。

 自然発生した御霊ではなく、とある特殊な事情により神様たちの手によって作られたという非常に珍しい「神造の神」であり、その潜在的な能力は別格と言えるほどに強大だが、幼さゆえ力をまだ上手くコントロールできないことから、あらゆる悪性の存在からまさに「カモネギ」と見做され、至高の供物しょくじとして常に狙われる立場にある。

 霊力が強過ぎるため、非能力者であっても視認可能だが、耳や尻尾は見えないため、普通の幼女の姿として認識される。

 名雪のことを「パパ」、夏希のことを「ママ」と呼ぶ。

 「九」というのは神様としての名前であり、普段はいみなとして呼ぶのを避けられることから、名雪を含む周囲の人間や御霊達は渾名に相当する「稲穂いなほ」の名前で呼んでいる。神様としての正式名称は「第十七代護国院高座郡稲荷総鎮守・いちじく」。

 立派な神様になることを目指し、今日も保育園に通ってお絵描きや駆けっこやお昼寝などに励んでいる。


遠峰谷こだま夏希なつき

 16歳の高校2年生。雪女。

 雪女はその種族的特性として優れた器量を持って生まれてくるが、彼女は雪女の歴史の中でも傑出した存在の一人として知られている。

 銀髪碧眼の美人で穏やかで優しく、フランクな人柄。千年堂のお婆婆が、名雪の他に「もう一人のお守り」に就任させるために招集し、それに応じてやってくる。

 雪女は百鬼夜行の1柱に数えられる強大な妖怪だが、なぜか夏希はその能力と過去の記憶の一部とを失っており、本人は戦力的に稲穂の役に立てていないことを気にしている。が、その優しさや精神的な強さは稲穂のことを支えており、名雪はもちろん、周囲の御霊達からも厚く信頼されている。

 妖怪達が現代人間社会に対する浸透施策の一環として始めたアイドル活動の第一期生の一人であり、雨女、濡女、人魚とともに「アクエリアス」というグループ名で活動している。動画が爆発的にバズったため、4人とも有名人になってしまっており、目立つのが苦手な夏希はとりわけ困っている。

 メリハリのある体型をしているが、本人は「雪女はスレンダーであるべし」という考えに囚われており、普段はサラシをぎちぎちに体に巻いている。水着に着替えたり、薄手の寝巻きに着替えたりすると、男女問わず他者の理性を崩壊させる破壊神と化す。

 

・お婆婆

 鎌倉の極楽寺近くにある古道具店、「鶴屋千年堂」に住んでいる老女。普段は置物のように物静かだが、目を開いた時にはぞっとするほど不気味な空気を発する。普段閉じている瞳は薄い紫色。

 御霊関連の知識に富み、実質名雪の師匠にあたる。

 極めて強力な霊能力者であるらしく、現代を代表する能力者の一人である久世公陽曰く「地上、というかたぶん史上最強」。事実、名のある妖怪や精霊達でさえ、彼女を恐れて千年堂の近くには決して近づこうとしない。

 名雪が訪れるまで稲穂のことを庇護していたが、とある経緯からその世話の任を彼に譲るようになる。

 個人の所有など許されるはずのない世界最強クラスの神格武装「布都御霊剣ふつみたまのつるぎ」(千年堂にて商品として売られている。。)を持っているなど、その正体は謎に包まれている。


・名雪の母

 故人。

 死の直前に名雪の記憶をいじった張本人であり、名雪の中では別の男を作った上で子供を捨てた母親、ということになっていた。(実際には自身を人柱にすることで地獄の一部をこの世に顕現させるという禁術中の禁術「勅命結界ちょくめいけっかい黄泉比良坂よもつひらさか」を発動して死亡している)

 Tシャツにジーンズといったラフな格好を好み、人間・御霊問わず誰とでもすぐに仲良くなり、お酒大好きで大声で笑う、名雪とは全くタイプの異なる性格。

 霊能力者であったらしく、お札や霊装を用いることなくパンチ一発で強大な悪霊を討滅していたなど規格外の戦闘能力を持っていた一方、霊力者協会である「伊勢」に全く情報が残っていないなど不審な点が多い。


久世くぜ公陽きみはる

 もともとお婆婆が稲穂の「お守り」に据えようとしていた霊力者で、名門である「久世」の出身。現代の霊能力者の最高ランクである「特A」級の能力者の一人。24歳。

 俳優のような美丈夫で、髪は金髪、背が高い。フランクで明るい性格で、名雪がお守りに就任してからは、霊能力者の先輩として色々世話を焼いてくれる。

 


◯用語

・御霊(みたま)

 いわゆる霊的な存在の総称。人間以外の高次霊位体。

 幽霊、妖怪、精霊はたまた神様と、とりあえず人間から見た「霊的存在」を全て指すための便宜的な言葉。

 その存在は4つのカテゴリー(格)に分けられており、霊力的には1と5が最も強い。

  1.神格:神の領域(稲穂、など)

  2.精霊格:天使や精霊の領域

  (3.現格:最も霊的に中立(ゆえに力も弱い):人間)

  4.妖瘴格:妖怪や悪魔の領域(雪女、など)

  5.魔王格:伝説や伝承上の魔物や魔王の格


・御守り(おもり)

 何らかの事情により神様に付けられる見守り役のこと。人間と妖怪、それぞれから一人ずつ選ばれる。稲穂にとっては名雪と夏希が「御守り」になる。

 その任務の重要性や難易度の高さから、就任するのは時代を代表する高名かつ経験豊富な霊能力者であることが通例。名雪のような素人が就任するのは歴史上初のことになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お稲荷さまのお守りさま 斉藤すず(斉藤錫) @mm0612

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る