おばあちゃんの秘密

一田和樹

おばあちゃんの秘密

「母さんの年金でだいぶ助かってるな」

 両親の会話を立ち聞きした時、あたしの疑念は確信に変わった。あたしは長いことおばあちゃんの姿を見ていない。何度もおばあちゃんの部屋に入ったが、おばあちゃんがいたことはない。どこに行ったのか訊いても教えてくれない。

 子供だと思ってなめてるに違いない。きっとおばあちゃんはとっくに死んでいて、年金を受けとり続けるために両親はそれを隠しているのだ。年金詐取ってニュースで聞いたことがある。

 こんなこと隠し続けられるわけがない。早くなんとかしないと詐欺罪かなにかでお父さんとお母さんがつかまってしまう。でもなかなか言い出すことができなかった。

「おばあちゃん、ほんとうは死んでるんでしょ?」

 ある日の夕方、居間でテレビを観ていたお母さんに思い切って言った。

「なんの話? もうすぐ晩ご飯ですよ」

 お母さんはしらをきると、テレビを消して立ち上がり、居間を出ようとした。


「ほんとはおばあちゃんは死んでるんじゃないの? 年金がほしいから隠してるんでしょ?」

 お母さんは立ち止まると、まじまじとあたしの顔を見た。ヤバい。自分の身に危険がおよぶ可能性を考えていなかった。両親がおばあちゃんを殺した可能性だってあるのだ。

「あのねえ……」

 お母さんは口を開いたが、すぐに閉じてそのまま居間を出ていってしまった。

 その時、居間の隅に白髪だらけ老婆が立っているのに気がついた。おばあちゃんだ。いったいいつ、どうやって入って来たんだろう? 全然気がつかなかった。今までどこにいたんだろう?

 その時、キッチンからお母さんの声がした。

「おばあちゃんが壊した姿見鏡すがたみ。新しいのがやっと来たの。また壊したりしないでよ」

 あたしは思わず、近くの植木鉢を老婆に投げつけていた。姿

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

おばあちゃんの秘密 一田和樹 @K_Ichida

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ