ゾンビが出ようと家族を喪おうと、それでも日常は続いてしまう

 人をゾンビに変えてしまうウイルスが大流行した世界、そのウイルスのために妻を喪った男の物語。

 ゾンビパニックもののお話……なのですけれど、そこまで単純に大混乱してないところが素敵なお話。
 世界の崩壊度合いがそれほどでもないというか、わりと普通に生活してます。
 リモートワークとはいえ普通にお仕事もしてるし、食事の宅配サービスなんかも頼めば来る世界。

 とはいえ、決して平和なわけでなく、現に主人公は奥さんを亡くしています。
 妻の死に目にも会えなかったことや、ゾンビ避けのために頭に天冠(死者が頭につけるあの三角の布)をつけるのが常識となっていたり……と、いろいろと現実の感染症騒動にも通じる苦労や苦悩が見えるところが印象的。

 ゾンビものという意味ではホラーですけど、個人的には現代ドラマっぽい感覚で読みました。
 家族を失った主人公の孤独と苦悩。崩壊はしていないまでも、いろいろ不安定な社会のありよう、などなど。

 我が身を振り返るというか、つい現実に置き換えてみてしまうお話でした。