第25話 反撃開始

「イワマさん、あなたを倒します。」

「イワマ、あなたを倒させてもらうわ。」


そう2人が言う。

イワマはそれを聞き、あくまでも余裕の笑みで挑発する。


「ふーん、言ってくれますね。いつでもどうぞ?」

「ええ行かせてもらうわ。武器創造・幻刀!」


そう言うと一休は青白く輝く刀を作り出し、上段から攻撃を仕掛ける。それを紅い光を纏った腕を交差させて受けることで防ぐイワマ。幻刀の刃は光の粒を放ちながら少しずつ分解されていく。


「今!」


一休がそう言うと、一休の背後からアーリンが飛び出してイワマに殴りかかる。アーリンは腕に、凶悪な見た目をした棘の付いた蟲を纏っていた。


「喰らええええええ!」


そう叫んで殴りかかるアーリン。

イワマはその拳を掴み、捻ったかと思うとアーリンを地面に叩きつける。


「シッ!」


アーリンの後ろから一休が再び横薙ぎの一閃を喰らわせようとするが後方に跳びのかれたことで、避けられてしまう。

しかし、突然イワマが背後から吹き飛ぶ。


「ッ!?」


イワマは困惑の表情で辺りを見回す。

しかし周りには誰も見つからない。


「まだまだ行くわよ!」


一休とアーリンは再びイワマへと攻撃を仕掛ける。それを腕だけで余裕でさばくイワマだったが、暫くするとあらぬ方向から攻撃を受け吹っ飛ぶ。


一休の脳裏に、アーリンの言っていたイワマの弱点が思い出される。



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「一休ちゃん、あいつには弱点がふたつある。ひとつは多分自分の認識、もしくは理解できる量や概念しか封じ込める?ことは出来ないってこと。」

「…つまり?」

「例えば自分の匂い、出す音は認識できるから封じられるってこと。閃光蟲・爆の時に少し焦っていたのは、多分爆発が始まって自分に到逹するまでの数瞬の間にあの岩を出さなくちゃいけなかったから。」

「なるほど...?」

「それと2つ目は、同時に出せる岩の上限数は多分ひとつってこと。こっちに関しては若干根拠は薄いけれど、さっきの木の球体から出した棘。あれを全部消さなかったり、木の球体ごと消さなかったのは余裕のあらわれの可能性もあるけれど、多分岩はひとつしか出せないから」

「確かにひとつしか出していなかったわね。」

「そう、だからあの万能そうな能力にも色々と制約はある。問題はあいつの目が良すぎることと、反応が速すぎるってこと。」

「ふむふむ?」

「例えば私の閃光蟲の攻撃を防いだ後に私の姿をすぐに発見したり、単純に動体視力や反射神経が凄く良くないと爆発が自分に到達するまでに認識して術を発動するなんてことは出来ない。」

「イワマが認識した攻撃は防がれる。でもイワマに認識できない攻撃は無い。それじゃあ詰んでないかしら?」

「ううん、認識されたら反応されるって事は認識させなければ良い。」


それを聞いた一休は、なにかに気づいたのかアーリンを見てニヤリと笑う。


「なるほど。後は私の役割ってことね。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


一休の思考は再びイワマとの戦闘へと引き戻される。


一休がイワマに下段からの切り上げを仕掛ける。

イワマはそれもさばく……かと思われたが、イワマの皮膚に一直線に赤い線が走ったかと思うと、鮮血が吹き出す。チャンスとばかりにアーリンも殴りかかり、イワマはそれも喰らう。そして今回も見えざる攻撃が当たるかと思われた次の瞬間、イワマが自身の後頭部周辺に岩を出現させる。パリンッ、とガラスの割れるような音がしたかと思うと岩に触れている拳から順にアーリンが姿を現す。


そう、実は最初にイワマの前に現れたアーリンは一休の作りだした分身に幻包をかけたものであり、本物のアーリンは一休のかけた幻包によってイワマに認識されることなく攻撃していた。


「やっぱり君か。弱ったフリをしたら必ず頭を狙ってくると思っていたよ。」

「ッ、バレちゃいましたか。一休ちゃん!」


アーリンが一休に呼びかけると、一休は分身を消し、全妖気を掌に集中しているところだった。


「これはダンポでも死ぬレベルの攻撃よ。喰らいなさい!滅世砲ォオ!」


一休がそう叫び、掌を突き出すと高密度の妖気が蒼白を超えて純白となり放出される。滅世砲は大層な名前ではあるがやっていることはただの妖力弾を打ち出しているだけである。ただの妖力弾と違うことは一つだけ、その練り上げられた妖力の質があらゆる物質を消すほどにまで高められていること。文字通り練度が違うということである。


イワマは高速で迫り来る巨大な光線を前に、持ち前の思考速度に加えて、死の寸前にある事で更に加速したことで、かつてないほどの速度で考えていた。


「…(どうする、避けるのは…無理。岩を消して出すには時間が足りない。待てよ?さっき神腕で受けた時、一休さんの刀は少しずつ分解されていた。それにアリンの姿を隠していた術も岩に触れたところから解除されていった。……つまり、神気で妖気は打ち消せる!流石にここまでの密度と量のものを消すのは無理だろうけど軽減ならできる筈!そしたら時間を稼げる!それにさっきの言葉…。)」


そこまで考えたイワマはニヤリと笑い、全身に纏っていた紅い光を片腕に集中させ放出する。その光は深紅を超えて漆黒へと染まっていた。


その漆黒の光によって稼げたのはほんの3秒程度だった。しかし、それだけあれば再度岩をだすには充分過ぎるほどの時間だった。


岩は暫く一休の滅世砲を受け止めていたが、やがて割れてしまう。その中から現れたのは気絶したダンポだった。イワマは先程の一休の言葉を聞いて、一休にも助けようとした者を自分の手で殺してしまったという苦しみを負わせようとしていたのだ。


そうして、ダンポとイワマは共に、最初より少しだけ弱くなった滅世砲の光の奔流に晒される。


光の中でイワマの意識は深く深く落ちていく。

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一休ちゃんは今日も毒舌 紅琥珀主 @benikohakunushi

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