第24話 イワマとの戦闘
「こんにちは、お姉さん。いや、一休さん。」
そう喋りかけて来る少年。それに対し一休は内心かなり驚きながらあくまでも平静を装い聞き返す。
「どうして私の名前を知っているのかしら?」
「そりゃあ、一休さんは有名人ですから。」
「へえ?その事とダンポを攫ったことは関係あるのかしら?」
「うーん、まあ多少は。というか一休さんは1年位前にうちの下っ端に殺されたはずなんですが?」
その言葉で一休は、こいつは敵だと確信し、一気に戦闘態勢へと入る。が、そのまま会話を続ける。
「ふーん。あなた達は組織で動いているのね?一体何者で、何が目的なのかしら?」
その言葉を聞き少年は目が笑っていない笑顔を作り、喋り出す。
「僕は世界の目覚めの1柱、天岩戸のイワマと申します。目的は…そうですね。とりあえず貴女を殺すことです。」
そう言って紅い光を纏うイワマ。
次の瞬間、一休の視界が紅い光で埋めつくされた。それを認識した瞬間には、一休の身体は宙を舞っていた、そして引き寄せられるような感覚があり、数瞬の後、再度一休の身体は宙を舞う。それが幾度となく繰り返された後、1度止まる。
「…っ!?!?」
ここでようやく一休の身体が痛みを認識し始める。
「(痛っ、速すぎる!?今のは何?とりあえず距離を取らなくちゃ。)」
そう考えていると声が突然、さっきまで誰もいなかった筈のすぐ近くから聞こえてきた。
「もしもーし。一休さん生きてますか?」
「空間幻影・歪長!」
すぐさま空間幻影を発動し、一旦イワマからは見えない物陰に距離をとる
「おっ!生きてた。でも思ったより弱い?あれだけあの方が警告するぐらいだからもっと強いのかと思ってたけど。」
煽るように独り言を言うイワマ。
「…(言ってくれるじゃないの。)」
それを聞いて苛つきながらも空に向かってイワマに気づかれないよう小さい青い火花を打ち上げる。
それを見て、今まで隠れて少し遠くから鷹眼で窺っていたアーリンは、術を発動する。
「閃光蟲・舞!」
術を唱えるとアーリンの周囲に蟲が現れ、イワマの周りに向かって飛んだかと思うと、強い光を発しながらけたたましい羽音を立てて飛び始めた。
「うわっ、眩しい。それにうるさいなあ。」
イワマはあくまでも余裕を感じさせる口調で言う。アーリンはそれを確認し、新たに術を発動する。
「閃光蟲・爆!」
「こんなの避ければ…ん?身体が!?」
イワマは避けようとしたが、身体に糸が巻きついていることに気づく。
それもそのはず、先程アーリンはイワマの周囲を飛び回らせた閃光蟲に妖力で作った、集中すればギリギリ見えるくらいの糸を出して縛らせていたのだ。本来であれば気づく筈だが、閃光蟲の眩しさで目を細めていたため気づけないという二段構えの策である。
「まずっ…!」
膨大な量の音と光が辺りを埋め尽くす…筈だった。しかしそこに代わりに現れたのは巨大な岩だった。次の瞬間岩が消えたかと思うと
イワマが現れた。
「無傷!?」
「ふう、危ない。今のは焦りましたよ。」
そう言って辺りを見回すイワマ。
「んー?お、いたいた。」
そして、アーリンを見つけると再び紅い光を纏う。
「よっ。」
気の抜けた掛け声と共にアーリンとの間に岩を出現させ、即座に消すイワマ。
すると、驚くべきことにアーリンが、イワマに向かって引き寄せられる。
「なっ!?」
「君はえーとアリンだっけ?アホな樹人族のジジイの愛人をしてた。」
「どうしてそれを?」
アーリンは内心の怒りを押しとどめ、イワマに尋ねる。
「ん?まあ君の事も重要度的には下の方だけど組織のリストに載ってたからね。唯、今の攻撃を見る限り生かしておくと脅威になり得ると判断したからここで始末させてもらうよ。」
そう言って岩を出すイワマ、イワマはそれを置いた瞬間その岩を蹴って飛び退く。
「じゃあね!アリンさん!」
「っ!」
次の瞬間、岩が割れると共に爆音と閃光がアーリンを包む。光が収まり、凄まじい土煙が立ち込め、やがて晴れる。そうして見えてきたのは傷だらけのアーリン…ではなかった。アーリンの代わりに見えてきたのは木の根で作られたような巨大な球体だった。
イワマはそれを見て呟く。
「ん?なんだあれ?」
次の瞬間、木の球体に無数の棘が生えて来たかと思うと、その棘がイワマに向かって一斉に射出される。イワマはそれを岩を出現させて防ぐ。しかし、棘がなくなりそうになる度に新たに棘が作られ射出され続けるため、イワマは岩を消すことが出来ずにいた。
「んー、厄介だなあ。でも、だんだんあの木の球体小さくなってる?しばらく待つか。」
そう言って岩の後ろに身を隠すイワマ。
それを離れたところから隠れながら伺っていた一休。
「アーリン…。」
「なぁに?」
と突然、一休の横から声がした。
「えっ!?アーリンあなたなんでここに?」
「私がさっき攻撃を食らいそうになって危なくなった時、あの木の球体がこの指輪から出てきて護ってくれたの。」
そう言ってかつてラフールからアーリンへと言って渡された指輪を見せるアーリン。
一休はそれを見てしばし感傷に浸る。
「で、あの木の球に棘を出し続けるように命令して、あいつが岩の後ろに隠れて視界を遮られてる時にこっちまで移動してきたの。」
「なるほど。さて、あいつをどうやって倒したものかしら?」
「一休ちゃん、私あいつの弱点見つけたかもしれない」
そんなことをサラッと言ってくるアーリンに一休は思わず聞き返す。
「え?ほんとに?」
「うん、あいつの弱点は…」
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