第23話 遭遇・世界の目覚め

「ふわぁ〜あ。」


そう大きなあくびをして目覚めた一休。その視界に上から覗き込むようにしてアーリンの顔が映る。


「あ、一休ちゃんおはよう。」


「おはようアーリン。…何してるのかしら?」


「膝枕だよ。」


「……なんで?」


「私の妖力を分けた方が回復が早いんじゃないかと思って、なるべく接触の多い体勢にしようかなーって。抱き枕体勢の方が良かった?」


「…。ま、まあそれは置いといて。さっきの守護獣召喚でダンポを召喚出来なかった以上、ダンポを攫った子を直接探すしかないわね。」


「でも昨日あれだけ探しても見つからなかったのにどうやって見つけるの?」


「うーん、どうしようかしらね…。」


そう言って悩む一休。


「探すとしたら…鷹眼、狼鼻、兎耳、妖力探知あたりかしらね。」


そう言って探知系統の技を列挙する一休。


「一休ちゃんの妖力探知は範囲が広いけど、そこまで詳細な事は分からないよね…。鷹眼は障害物を透過できないし、狼鼻は?」


「ダメね。狼鼻と兎耳は一応、最初に追っていた時も何回か使ってはいたのだけれど、その時に何故か途中で匂いも音も途切れたのよね。それも攫って行った子のものだけじゃなくて、ダンポのも…。」


「うーん、厄介だね。それなら、妖力探知と鷹眼の併用はどう?」


アーリンのその言葉を聞いて瞠目する一休。


「…併用?…考えたこともなかったわ。併用、そうよね鷹眼も考えようによっては妖術の一種。なら出来ない道理は無い、か。長生きしてると頭が固くなってダメね。それじゃあやってみるとしましょうか!」


そう言って一休は立ち上がる。そして妖力探知を始めた。

途端に一休の身体から妖力が溢れ出す。一休はそれを極限まで薄く伸ばしながら一気に広げていく。その後しばらくして今度はそのまま目にも妖力を集中させ、鷹眼を発動した。アーリンはそれを見て自分が初めて妖力探知を使った時のことを思い出していた。


「…(あのときは不思議な感覚だったなぁ。自分がいつも感じてる情報よりかなり大雑把になるとはいえ、半径15m内の事が大体分かるってよく考えたらすごいことだよね。一休ちゃんはそれを2km以上も広くできるんだからやっぱりすごいなぁ。というか、これ単体の凄さに勘違いしてただけで、本来この妖力探知って…)」


そんなアーリンの思考は一休の言葉に遮られる。


「見つけた!行くわよ、アーリン!」


「うん!」


そう言うと二人は声を合わせて叫ぶ


「「妖纏・馬脚!」」


2人が地面を踏みしめる。すると、地面に亀裂が入り、次の瞬間一休達は20m程の高さまで跳び上がっていた。

そして、そのまま身体を前傾姿勢にしたかと思うと次の術を唱える。


「「空固!」」


そして一休達は一時固まった空を蹴る!

砲弾のようなスピードで打ち出された一休達はそのまま風を切りながら世捨街へと突っ込んでいく。

そして、土煙をもうもうとあげながら着地する。一休はその土煙を一気に吹き飛ばし目の前の、頬に太陽を隠す岩の刺青をした少年に歩み寄り、言い放つ。


「観念しなさい!ダンポをどこにやったのか、白状して貰うわよ!」







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お久しぶりの解説コーナー!

今回は妖纏と妖力探知についてです!


妖纏とは…

妖力を身体の各所に纏うことでその部分の能力を飛躍的に引き上げる技術。妖力を持っていれば誰でも出来るので、能力の上昇量等に個人差は有るが、妖界の住人は基本的にみんな使うことが出来る。別に纏った箇所が動物の身体になるとかではありませんので、残念ながらうさ耳一休ちゃんにはならない。


妖力探知とは…

作中ではアーリンが気づきかけているが、自身の身体から妖力を放出し、自己を拡張する事で周囲を自身の領域と定める技術。というのが本来の効果である。しかし、周囲に完全に均等に妖力を放出するという高度な妖力操作と、維持にはそれなりの妖力量を要求される点、唯の大雑把な探知と思われている点により、次第に使い手が減っていき現在では使えるものは殆ど残っていない。

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