これ、作り話なんだけどさ。
×90
おさげの女
これ、作り話なんだけどさ。いや、正確には聞いた話を俺流にアレンジしたって感じ。だから怖がって欲しいというよりは、これを本当にあった怖い話的なノリで話したら怖いかどうかの批評をして欲しいんだわ。じゃ、始めるよ?
「おさげの女」
俺のいた小学校には「おさげの女」って怪談があってさ。みんなで「おさげの女」の話をしているときに「おさげの女って何?」って聞いちゃうと、おさげの女に殺されるって怪談。これが結構子供たちに人気でさ、だってみんなでおさげの女の話をしてるのに、そこにいる奴は誰一人としておさげの女を知らないんだぜ? だから全員知ったかぶって話すわけさ。「あー、おさげの女ね」とか言って。そこに「おさげの女」の怪談そのものを知らない奴が来るとさ、決まって聞くんだよ。
「おさげの女って、何?」
それを聞くと全員が楽し気にどよめくわけだ。「うわー! あいつおさげの女知らないらしいぜー!」「はい死んだー! おさげの女に殺されるー!」って。でも当の本人は訳も分からず困惑するだけ。子供って身内ネタ好きじゃん? イジられてるやつの気持ち何かそっちのけで嘲笑うわけだ。更にはそっから居ない人扱い何かしちゃったりして。登校してきても挨拶されても全員無視。「あれ? どこからか声がするぞー?」「心霊現象だー!」っつって。まあイジメみたいなもんだよな。
そんなクラスの1人をいない奴扱いする悪い文化があったわけなんだけど。実は俺の小学校。本当に人が消えるらしいんだよ。入学生と卒業生の数が合わないっつー怪談もあるんだ。転校だとかなんだとかって理由じゃない。確実に存在しなくなってる子供がいるって。
で、俺数えてみたんだよ。こないだ。卒アル引っ張り出して、入学式の写真に写ってる椅子の数と、卒業生の数を比べようって。そしたらさ、無いの。入学式の写真が。少ないとかじゃなくて、一枚もないの。でもそういう学校もあるだろうと思って、どうにかこうにか比べられないかなーって色々探してたのよ。そしたらさ、ちょうど一枚あったのよ。四年生のだけど、学校の航空写真が。人はいないんだけど、学校の敷地内に一年生が自由研究で使った朝顔が置いてあるのが映っててさ。それ数えればわかると思って。で、数えたの。
朝顔の鉢の数が242個。卒業生は、181人。
数え間違いだと思ったよ。だってさ、6クラス30人で総勢180人。まあ31人とか29人のクラスもあったけどさ。それにしたっておかしい。だって60人の差があるんだぜ? こんなの、一年生の時は1クラス40人だったってことじゃんか。どうしても納得いかなくて母校に電話したんだよ。「つかぬことをお伺いしますが、そちらの小学校の一年生は1クラス何人いますか?」って。そしたら「はあ。30人前後ですが」って言うんだよ。いやあ安心したよ。そもそも朝顔だって1人1個じゃないかもしれないし、他の学年もやってたかもしれないもんな。一応ついでに聞いたんだよ。「6年生は何人ですか?」と。そしたら「6年生は1クラス12人です」
どう? 怖い? そんな怖くない? でも聞いたことない感じで面白くない? 自分で言うのもなんだけどさ、俺は結構イケてると思うんだよね。
でもさ、実はこれ、話すの二回目なんだよ。こないだ友達と集まったときに話しちゃったの、今思い出したんだよ。酒も入ってたし、結構な自信作だったから、気分良くなっちゃってつい、ね。
小中高と一緒で昔っから仲のいい5人組なんだけど、そんときも今みたいな感じでさ。「あー、割といいんじゃない?」「ちょっとオチが弱いかなー」「俺怖いの無理だからダメ―!」とか色々言われたんだわ。
そんなこんなで好き勝手言われてたら、ユウトが何かを思い出したみたいに「あっ」って言ったんだよ。あ、ユウトって俺の幼馴染ね。「この話、もしかして”知らない女”のアレンジ?」って。いや確かに知らない女は有名な話だけどさ、一発で当てられると思わなくって。そしたらみんな口々に言うわけさ。「ほんとだ!」とか「結構まんまじゃね?」とか。俺なんか恥ずかしくなってきちゃって。別にパクったわけでもないのにさ。
でも、そん時ある一人がぼそっと言ったんだよ。
「知らない女って、何?」
もう一同大爆笑! いや流石に日本にいたら一度は聞いたことあるだろ! って。そこはまあ何か、なあなあで済んだんだけどさ。
で、それを今何で思い出したのかって話なんだけど。俺、この「知らない女って何?」って聞いてきたやつ。誰なのか知らないんだよ。
これ、作り話なんだけどさ。 ×90 @SLU90
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