第2話涼しい冷や麦

 皆様の夏の涼味を感じる料理は何でしょうか?

 恐らく「素麺」と言われる方が多いのではと思います。豊富な薬味で食欲がわかなくてもツルツルっと食べられる。

 我が家では素麺ではなく「冷や麦」。皆様は冷や麦を食べた事御座いますでしょうか?

 細さ順に「素麺」「冷や麦」「うどん」となるかと思います。その中で一番影が薄いのが冷や麦だと思います。

 素麺やうどんはよく食べられている印象が有りますが…冷や麦?を食べると言う人は殆ど聞きません。私の周りに居ないだけかもしれませんが。


 冷や麦の歴史は存外に古く、室町時代に原型になる食べ物が生まれたと。

 庶民が「手延べ素麺」に憧れて、何とか細い麺を啜りたい!と言う思いから作られたと。成立年は詳しくは無いのですが、当時は「切り麦」と呼ばれていたのが「冷や麦」と呼ばれ現在に至る。

 庶民の憧れから生まれた麺。良いじゃないですか、冷や麦。


 我が家では冷や麦は特別な食べ方を致しました。

 まず冷や麦…どう食べるのか?

 素麺と同じく汁に付けて薬味と啜る…のでしょうか?

 うどんもざるうどんみたく汁に付けて冷たい物は食べますね。


 そのどちらでもありません。「我が家の冷や麦」を侮らないで頂きたい。


 我が家では冷や麦の汁から作ります。まず前日から干したどんこ椎茸から出汁を取ります。そして翌朝に玉ねぎ、人参をスライス。

 どんこ椎茸もスライスそれを干し椎茸の出汁で煮るのですが、そこに「干した白エビ」を投入するのです。干し椎茸と干した白エビの丘と海の出汁がメイン。それらがクタクタに煮えてきたら醤油と砂糖で味を整えます。

 もうつけ汁にするので味は「濃い目」に仕立てて、鍋ごと流水で粗熱を取り、その後に冷蔵庫でキンキンに冷やします。


 それを茹でて冷やした冷や麦に好きなだけ掛けて食べる。もう具材ごとかきこみます。

 更にその出汁つゆに魚のすり身や有頭甘エビを加えると少し違いますがお雑煮の汁にもなります。我が家の晴レノ日の味です。


 同じ地元の人間にも「冷や麦」どう食べる?と聞くと、「そもそも食べない」と言われてしまいます。


 ですが申したい。甘辛い独特のつけ汁にうどんでは足りず、素麺では勝ち過ぎる。冷や麦こそが絡んで「いい塩梅」になるのです。


 レシピは上に書いた通り。ご覧になった皆様もご自宅で作ってみては如何でしょうか?家族で冷えた汁を掛けてかきこむ。あの一体感。なんとも言えません。


 我が家ではもう祖父母が亡くなってからは「素麺」一択になってしまいました。何分前日から仕込まなければならない。素麺の場合は前日から用意する必要は殆ど有りませんから、楽なのです。


 今は料理も「時短」に「手抜き」を如何にするか。仕込みなんてしたくない。

 それが本音ですよね。


 昭和の時代は前日から仕込む涼味もあったのです。私も時短に手抜きは大いに有りな人間なので否定はしません。


 ですが私の記憶が途切れたらもう「我が家の冷や麦」は絶滅してしまう…


 それだけは避けたい。そう思いここに書き記します。

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私の食卓 太刀山いめ @tachiyamaime

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